「ことば」と「イメージ」をテーマに、文学作品の装丁・装画に使われた作品(または同一シリーズのもの)や、ことばを取り入れた作品を取り上げ、緊密な視覚的イメージとテキストの相関関係を考察し、美術表現の広がりを紹介します。
「ことば」と「イメージ」の関係をコレクション作品から考察 絵画や彫刻などの美術作品を鑑賞する際、描かれた人物が思うことや、風景などが表現すること等、その奥に何らかのストーリーを見いだそうと想像力をかきたてられることがあります。 また、文芸作品を読む際に、情景や人物を描写する文章から視覚的なイメージを想起したり、逆に挿絵から内容や雰囲気を読み取るなど想像力をかきたてられることもあります。 このように、絵や彫刻などの視覚的な「イメージ」と、文章などの「ことば」との関係は密接かつさまざまな関係を持つといえます。
相互に影響を与え合う、もしくは「ことば」がイメージを想起 例えば、詩人や小説家が美術作品に、または画家や美術家が文学作品に影響を受けることは多々あり、近年の奈良美智とよしもとばななのように、装画や挿絵でのコラボレート、または美術作品をモチーフにした詩や小説などにその相互関係を見ることができます。 また、現代美術の作品の中には、文章やことばのもつイメージを想起する力を取り込んだ作品もあります。アルフレッド・ジャールの《われらの狂気を生き延びる道を教えよ(ヒロシマのために)》では、大江健三郎の印象的な小説のタイトル『われらの狂気を生き延びる道を教えよ』を作品の中に取り込むことで、「ヒロシマ」の現代的な意味を問いかけます。
「ことば」と「イメージ」の関係を問い直す 反対に、ことばをより記号的に、または、その意味以上の意味合いを拒否することによってことばとイメージの関係性を問い直す作品もあります。 マルセル・デュシャン《エネメルを塗られたアポリネール》は、「サポリン・エナメル」という塗装会社のポスターを「サポリン(SAPOLIN) 」と「アポリネール(APOLINERE)」という綴りの変換によってまったく違う意味に書き換えたいわばことば遊びの作品であり、高松次郎の《日本語の文字(この七つの文字)》では、文字通り、「この七つの文字」という7つの文字のみが印刷され、文字という記号と意味がかたく結びついています。
本展では、このように「ことば」をめぐる作品を通して、視覚的なイメージとテキストの関係性を問いかけます。
出品作家 大岩オスカール幸男、大竹伸朗、小林孝亘、奈良美智、舟越桂、日高理恵子、長谷川潔、駒井哲朗、浜口陽三、加納光於、大岡信、池田満寿夫、アルフレッド・ジャール、岡崎乾二郎、オノ・ヨーコ、松澤宥、荒木高子、マルセル・デュシャン、高松次郎、荒川修作、河原温ほか
全文提供: 広島市現代美術館
会期: 2011年3月17日(木)-2011年6月19日(日) 会場: 広島市現代美術館
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