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坂川守:Press
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 1月 15日

画像提供:児玉画廊|京都

坂川は一貫して身体性というテーマのもとに制作を続けていますが、これまでそのありようは幾重にも変遷を重ねてきました。最初期における「Rocks」と題された一連のペインティングでは、ボディービルダーの筋肉の隆起や、マネキンと人間が一つに混成したような人物像など、極度に誇張された身体イメージまたその質感を再現するかのような艶やかで粘りのある画材(ゴムやロウのような)を駆使し、坂川の身体性への関心を端的かつグロテスクに吐露したものと言えるでしょう。 やがて、具象性が陰を潜め、やがてモチーフは抽象化の兆候を見せ始めます。2005年頃からは、今度は神経組織や血管など、表からは見えない部分に着目し、もはや皮http://www.jalan.net/uw/uwp2011/uww2011search.do膚や筋肉という身体の外殻を失って、ただ有機的な曲線が絡み合うように描かれた抽象絵画のような様相を呈していました。 最近では対象は人間ではなくなり、キャラクターや玩具などにモチーフを取り、それを描いた上で絵の具を押しつぶす等して、原型が分からなくなるまで分解、再構築しています。モチーフが本来持っていたポップな色彩や丸みを帯びた柔らかな形態が画面にもその名残を見せますが、その裏側には、あえて人体をモチーフとしないが故にそのグロテスクさがじわじわと広がっています。 こうして流転する表現の中に、色彩の混合、形状の融解という共通要素はそのままに、坂川自身の根幹部分である生命的なモチーフへの拘わりを核としながら変遷する独自の世界観の展開が見て取れます。そして今展覧会においては、近年のフラットで鮮やかな色彩で見せる画面構成からさらなる展開を遂げた、坂川の新作による構成となっております。 今回発表されるペインティングやドローイングでは、あるモチーフの断片、例えば人物の顔、動物の体、遊具やお菓子など、様々な要素がパッチワークのように継ぎ接ぎされて、何とも表現しがたい奇妙な形状を作り出しています。それぞれの断片は、あるいは小窓のように、あるいは泡かシャボン玉のように、別々の世界がぽっかりそこだけ口を開けたように描かれています。別の紙やキャンバスに描かれたそれらの断片を貼付けるためにまるで封鑞のように押し潰されてはみ出した絵具がその輪郭を有機的なフォルムで鮮やかに縁取っています。また、今回の一連の作品における坂川の着想点のひとつは、幼児が初めて接触する外界のひとつであり人間関係が交錯するコミュニケーションの場でもある「公園の砂場」です。過去のダイレクトな身体性の表現を経て、近年、子供の世界から題材を抜粋してきた坂川が、テレビのキャラクターや玩具といった内遊び(内的志向)から、外遊び(外的志向)へと徐々にゲージを押し広げ、身体と世界というおよそ対極に位置する両者を一つの円環に結びつけようとしているようにも思えます。 公園の砂場は、まさにモチーフの溶解という坂川の世界観をそのまま受け止めます。描かれた動物の頭部や頭皮の一部、生物の肢体、ふくらはぎとヒール、針葉樹を思わせる有機的な溶解物等、浮遊するかのように描かれたモチーフは、形態こそ予見させはしますが、すぐさま手の届くことのない異次元へと輪郭を解放していきます。砂場に準えて言うならば、イメージの散乱する画面は、砂底に埋め込まれたイメージの蓄積がスコップやシャベルで少しずつ掘り起こされ外界に触れることによって、再び息吹を取り戻していくようでもあり、イメージの断片は脈絡なく拡張していくのです。 ※全文提供: 児玉画廊|京都

最終更新 2010年 1月 16日
 

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