鈴木伸吾:Convenient Island |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2010年 3月 03日 |
作家にとって中国での初の個展となる本展では、精巧な縮小模型を撮影した大型写真を中心に展示いたします。 鈴木伸吾は1964年静岡県生まれ。1990年に東京藝術大学大学院美術研究科漆芸専攻を修了後、照明デザイナーとして働きながら作品制作を行います。当初はインスタレーション作品を多く発表し、作品をシミュレーションするための一方法として、縮小模型を制作していました。次第に制作工程の一部であった模型製作に魅せられ、それを写真に収めるスタイルへと変化していきます。本展では、タイトル「Convenient Island」からも分かるように「利便性を追求する日本」をテーマとし、それを象徴する大都市・東京をモチーフにした作品を発表します。 鈴木は日本の現代風景を作品のイメージソースとし、現場で撮影した写真や計測データをもとに平面図を起こすことから制作を始めます。模型に使用する素材は紙、ウレタン樹脂、アクリル板、カッティングシート、石粉粘土、上新粉や布など多岐にわたり、これらを用いて実世界の風景を綿密に再構築していきます。鈴木は模型を作る行為を通して、これまで見過ごしていた角度から現実を理解し、見慣れた風景に別の意味を見い出します。同時に、現実との微妙なずれが模型に組み込まれ、その過程の繰り返しを経て、現実の輪郭が現出されていくのです。 写真撮影は4x5カメラを用い、あらかじめ決めた構図で1作品につき1カットのみ撮影します。そして撮影終了後、縮小模型は小さなパーツを除いて全て破壊されます。それは、日本の都市景観が経済活動の一部として、あるいは政治政策の一環として存在し、生活者の無意識のうちに作られては壊される、その繰り返しの行為を体現していると言えるでしょう。 作家は自身の作品制作について以下のように述べています。
どんなに忠実に再現されていたとしても、模型の不完全さや人工的な雰囲気は拭い去ることはできません。鈴木の創り出す虚像の世界は、現実と虚構の狭間で鑑賞者の意識を揺さぶり、どこか居心地の悪さを感じさせつつも、張りつめた緊張感も感じさせます。鈴木が創り出す架空の実世界を、是非この機会にご高覧下さい。 鈴木伸吾 ※全文提供: 東京画廊+BTAP |
最終更新 2010年 3月 14日 |