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鈴木伸吾:Convenient Island
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 3月 03日

《Convenient Island》2007年|写真| (M)89x325cm/(S)21.5x80cm 画像提供:東京画廊+BTAP copy right(c) Shingo SUZUKI

作家にとって中国での初の個展となる本展では、精巧な縮小模型を撮影した大型写真を中心に展示いたします。 鈴木伸吾は1964年静岡県生まれ。1990年に東京藝術大学大学院美術研究科漆芸専攻を修了後、照明デザイナーとして働きながら作品制作を行います。当初はインスタレーション作品を多く発表し、作品をシミュレーションするための一方法として、縮小模型を制作していました。次第に制作工程の一部であった模型製作に魅せられ、それを写真に収めるスタイルへと変化していきます。本展では、タイトル「Convenient Island」からも分かるように「利便性を追求する日本」をテーマとし、それを象徴する大都市・東京をモチーフにした作品を発表します。

鈴木は日本の現代風景を作品のイメージソースとし、現場で撮影した写真や計測データをもとに平面図を起こすことから制作を始めます。模型に使用する素材は紙、ウレタン樹脂、アクリル板、カッティングシート、石粉粘土、上新粉や布など多岐にわたり、これらを用いて実世界の風景を綿密に再構築していきます。鈴木は模型を作る行為を通して、これまで見過ごしていた角度から現実を理解し、見慣れた風景に別の意味を見い出します。同時に、現実との微妙なずれが模型に組み込まれ、その過程の繰り返しを経て、現実の輪郭が現出されていくのです。

写真撮影は4x5カメラを用い、あらかじめ決めた構図で1作品につき1カットのみ撮影します。そして撮影終了後、縮小模型は小さなパーツを除いて全て破壊されます。それは、日本の都市景観が経済活動の一部として、あるいは政治政策の一環として存在し、生活者の無意識のうちに作られては壊される、その繰り返しの行為を体現していると言えるでしょう。 作家は自身の作品制作について以下のように述べています。

「なぜ私がミニチュア模型を作るのか、それは自由に自分を拡大、縮小することができるからなのかもしれない。模型制作の段階では、ミニチュア世界の作り手である私は巨人になり、また完成後は視点をミニチュア模型の中に合わせることで私は小人となる。子供のころ、飛び出す絵本に夢中になって楽しんだが、そんな感覚に似ている。小人の視点で撮った写真は明らかに違和感がある。全て真新しい素材で作られていて、一見完全な形に見えるが、模型は虚構に過ぎない。小さな模型を撮影し大型写真として発表するという私の作品を通し、それぞれを取り巻く現実のそのものを再認識できればと思います。」

どんなに忠実に再現されていたとしても、模型の不完全さや人工的な雰囲気は拭い去ることはできません。鈴木の創り出す虚像の世界は、現実と虚構の狭間で鑑賞者の意識を揺さぶり、どこか居心地の悪さを感じさせつつも、張りつめた緊張感も感じさせます。鈴木が創り出す架空の実世界を、是非この機会にご高覧下さい。

鈴木伸吾
1964 静岡県生まれ
1988 東京藝術大学工芸科卒業 
1990 東京藝術大学大学院美術研究科漆芸専攻修了 個展:
1996 ONEDAY ONESHOW, GALLERY360°(東京)、ルナミ画廊 (東京)
1997 ギャラリー美遊(東京)、修善寺新井旅館 (静岡)
1998 ルナミ画廊 (東京) 
2002 トキアートスペース (東京)
2009 アトランティコギャラリー SHIBUYA (東京)
2010 「Convenient Island」東京画廊+BTAP (北京) グループ展:
1998 「PHILIP MORRIS Final Selection」 東京国際フォーラム (東京)、「東京現代野外彫刻展」 世田谷美術館、砧公園 (東京)
2001 Vermont Studio Center USA. Open Studio (USA)、「TAMAVIVANT 2001」多摩美術大学絵画棟ギャラリー、都庁前駅構内 (東京)
2009 「2nd Art_icle Award 2009」 デザインフェスタギャラリー (東京)、KEUMSAN GALLERY (ソウル)、東京画廊+BTAP (北京) 、「明るい世界展」A.I.T ROOM (東京) 受賞:
1998 東京現代野外彫刻展:奨励賞
2001 Artist Grant of Vermont Studio center USA
2009 2nd Art_icle Award 2009:Grand Prix

※全文提供: 東京画廊+BTAP

最終更新 2010年 3月 14日
 

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