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木下雅雄:ポインタ
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 1月 19日

《鳥獣戯画 兎》2009年|58cm(H)|ブロンズ 画像提供:unseal contemporary copy right(c) Masao KINOSHITA

2003年のGEISAIミュージアムグランプリで特異で圧倒的な存在感を持つフィギュア作品で注目を集め、グランプリを受賞した木下は、継続的に個展を開催するというような形では活動を展開してきていませんが、2003年以降現在にいたるまで着実に制作を続けており、テーマも深化し、技術にもますます磨きがかかっています。 今回の個展は2003年以降の制作活動をふまえた当ギャラリーでの初個展となります。 木下の作品は、それが人であれ、神話的存在であれ、動物であれ、どれも一定の骨と筋肉で構成された特定の形姿(フォーム)をとらざるを得ないことへの悲しみ(たとえその肉体を誇っているかのように見えても)と、その運命に抗おうとする意志の力を感じさせます。その存在感の強さ(強度)は独特で、他に類似の作品を見ることはできません。木下の立体彫刻作家としての姿勢は、コメントにもありますが、日本の伝統を意識しつつ彫刻が本来持っていた存在感をどう現代でどう復元していくかにあります。 本展では新作立体6点を中心に、平面作品やドローイングを加えたものになります。 稀有な造形作家、木下雅雄の個展にどうかご期待ください。

作家コメント
外国の子供向けの彫刻の図鑑に、日本の彫刻は12~13世紀に飛躍的に発達し、その後は繰り返しです、と書かれていました。確かに、客観的に見ればその通りかと思いました。
その本には、もちろん日本の近現代の彫刻については、何も触れられていません。
奈良美智や村上隆が出て来るまで、日本の美術は文明開化の延長線上にあった事を思えば、仕方の無い事かもしれません。ではなぜ、鎌倉時代以降、日本の彫刻は目立った発展をしなかったのでしょうか?
おそらく、信長による比叡山焼き討ちなどの宗教政策や、秀吉、徳川によるキリシタン弾圧により、政治の中に宗教が入り込まなくなった事に原因があると思われます。
その結果、巨大彫刻のような大がかりな宣伝活動は必要とされなくなり、代わって浮世絵のような庶民芸術が発達し、それが現代の漫画文化へも繋がったのでしょう。立体造形も、根付に見られる極小世界にその粋が見出せるのは、同じ理由によるものかもしれません。
では、日本の宗教が、仏教でもキリスト教でも、政治と密接に結び付き、為政者は宗教キャラクターを数多く揃える事で権威を示し、庶民の心を掴み、彫刻家も巨大彫刻に腕を振るえる歴史が続けば良かったのでしょうか?
やはり実際の歴史どおりが良かったでしょう。正月には神棚で、盆には仏壇、クリスマスにはサンタを拝む、という程度の宗教感覚を残してくれた御先祖様には、心の底から感謝しなくてはなりません。 ただ、文明開化のグローバリゼーションこの方、政治も無く、宗教も無く、もともとそれ程エコノミックアニマルでもない日本人の性質を、自分自身で持て余しているような気がします。
その良くも悪くも不明瞭な民族気質に耐えられず、具体的な形を欲するあまり、実物大のガンダムなぞ作ってしまうのでしょうか?
と、あれこれ考えつつ、彫刻と関わってしまった以上、歴史的社会的意義など別にして、800年の彫刻的空白を埋める方法はないものかと思う今日この頃です。

木下雅雄 Masao Kinoshita
1971 長野県生まれ
1991 東京造形大学彫刻科卒業
2001 個展、ギャラリー元町(横浜)
2003 GEISAIミュージアム、グランプリ受賞
2005 GEISAI-7メダリスト展 (東京)
2006 北原照久コレクション展(人形の家美術館、横浜)
2007 The Exhibition of International Sculpture Masterpiece (台湾)、フギィアを巡る匠たち展(川本喜八郎美術館、長野)
2008 個展 (Eslite Gallery、台北)
2009 アートフェア東京出品

※全文提供: unseal contemporary

最終更新 2010年 1月 09日
 

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