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城戸悠巳子:吸血気
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 11月 04日

≪(ソのシャー­プ、ラミソ)≫2009年|油彩、アクリル、キャンバス|130.3x162cm|画像提供:YOKOI FINE ART|Copyright © Yumiko KIDO

油彩とアクリルを駆使し、現実とも非現実とも判じがたい世界を描き出す城戸。「魂の交流」をテーマとした前回の個展「ビ・ビ・ビ」から一年、その世界観を更に深化させた彼女が今回掲げたテーマは「前世」である。 薔薇をくわえ泡にまみれる女性の首もと、紅色の花を噛む口元、そして前世の記憶を包括するかのような大作。本展覧会は、彼女が抱く「前世」の記憶の断片を散りばめた新作8点で構成される。

人は死ぬと地球時間から離れ別の時間に行くという。別の時間とは私は宇宙時間と思っている。
人は他の動物とは違い、前世というものがある(人による)、私は常々前世を感じるのである。
今回テーマを「前世」としたのは、自分自身の感じる、前世で「私」が見た風景、感情を表現したかったからである。

生きて死ぬ、城戸にとってそれは地球時間から宇宙時間への移行を意味する。この二つの異なる時間の間を行き来したという記憶こそが、前世を持つ実感へと繋がって行く。

表現を通して自分以外の人の目に触れることで、浮かばれるとゆうかそこに“良い気”が生まれるのである。“良い気”が生まれるとそれに接した人は浄化され宇宙時間をほんの少しだけれど感じることができるのではないかと思う。そうゆう存在(宇宙)を感じるのは自然なことなのである。

前世の記憶の片鱗を前にして私たちは、おびただしい数の日常が際限なく繰り返される今この時にしばしの別れを告げるという、彼女にとってはごく自然な現象を目の当たりにするだろう。 地球時間と宇宙時間という二つの異質なる時間を内に秘める城戸。それは生きる事と死ぬ事の間の往来であり、生と死のはざまの生き物である吸血鬼を彷彿とさせる。しかし、城戸の作品に棲むのは、「吸血気」。地球時間に住まう者の血を吸って、その身の内から“気”を吐く。その“気”に浄化された者が魅せられるのは、宇宙時間であり、作品の前を去ってなお背後にぴたりと付いてくるのは、“血”と“気”の残り香である。 気だるい消化不良が切迫した欠乏感を呼び、やがて城戸の前世の虜となる。

城戸悠巳子 / Yumiko KIDO
1983  東京都生まれ
2005  女子美術大学絵画学科洋画専攻卒業
2007  東京藝術大学大学院美術研究科修了 【個展】
2007 城戸悠巳子展(麻布アートサロン / 東京)
2008 「ビ・ビ・ビ」(YOKOI FINE ART / 東京)
2009 「吸血気」(YOKOI FINE ART / 東京) 【受賞】
2002 平成13年度女子美奨励賞
佐藤太清賞公募展 佐藤太清賞
2004 新地ビエンナーレ 奨励賞

※全文提供: YOKOI FINE ART

最終更新 2009年 11月 20日
 

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