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ウィンター・ガーデン:日本現代美術におけるマイクロポップ的想像力の展開
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 5月 31日

八木良太 「VINYL」2006年 | シリコン、精製水、レコードプレイヤー、冷凍庫 | ©2006 Lyota Yagi Courtesy: Mujin-to Production, Tokyo

工藤麻紀子 「空飛ぶさかな」2006年 | キャンバスに油彩 | 130.5×162cm | ©Makiko Kudo Courtesy: Tomio Koyama Gallery

落合多武「drawing for cat slide」2007年 | 紙に色鉛筆、鉛筆 | 152×223.7cm | ©Tam Ochiai Courtesy: Tomio Koyama Gallery

タカノ綾 「ツノゼミ姫の出陣と夢」2009年 | 紙にボールペンと水彩 | 21×29.8cm | ©2009 Aya Takano/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

本展は、美術評論家、松井みどり氏のキュレーションにより、90年代後半から00年代前半にかけて現われた若い世代のアーティスト14組のドローイング、絵画、映像による作品で構成するものです。60年代末以降に生まれた彼らの活動には、断片を組み合わせて独自の世界観を表現し、時代遅れのものや凡庸なものに新たな用途や意味を与える「マイクロポップ」(松井みどり氏の造語)的表現が顕著に見られます。このような表現行為が、グローバル化がもたらす画一化のなかで個人がそれぞれの生きる意味を模索することを余儀無くされる現代の世界とどのように関係しているのでしょうか。

タイトルの「ウィンター・ガーデン」は「冬枯れの庭」とも「温室」とも訳すことができます。これが暗示するのは、不況や政治不安といった困難な世相のなかで、安価な素材やシンプルな方法を用いて日常に潜む特異な美を発見し、既成の組織を解体しながら新たな形を作り上げる微生物の働きにも似た想像力の道筋をたどっていく作家たちの営みです。その一見つつましく、子供の遊びにも似た表現のなかに、既成の「芸術」や文化のイメージから離れ、火や水との接触や連想や夢といった人間の身体や心のベーシックなはたらきに立ち戻ることで、現象世界における自らのありかたを認識する芸術の可能性が見出されるのではないでしょうか。

「ウィンター・ガーデン:日本現代美術におけるマイクロポップ的想像力の展開」は国際交流基金が日本の現代美術の新世代を国際舞台に紹介する目的で企画したもので、今秋から始まる海外巡回に先立って原美術館で国内披露をすることとなりました。原美術館では、松井氏及び国際交流基金の了承を得て、館の空間にあわせた展示プランを作り、各出品作家や所属ギャラリー協力のもと、国際交流基金所蔵の47点による構成に独自に約10点を追加した約60点で展観します。

【海外巡回先】
(1)2009年9月~11月 ドイツ(ケルン日本文化会館)、
(2)2009年12月~2010年2月 イタリア(ローマ日本文化会館)、
(3)2010年3月~ 英国(会場未定)

【出品作家】
青木陵子、泉太郎、落合多武、工藤麻紀子、國方真秀未、佐伯洋江、杉戸洋、タカノ綾、田中功起、千葉正也、Chim↑Pom、半田真規、八木良太、山本桂輔 (14組)

【「マイクロポップ」とは】
企画者、松井みどり氏の造語。イデオロギーや社会常識から離れて、個人が今ここの状況の要請に合わせて、様々な知識体験や体験から受け取った情報やイメージの断片を組み換えて、新たな視点や感性や行動の方法を構成する、また同時に、無名、時代遅れ、廃棄可能、断片的と言われるものに新たな用途や文脈を与えて新しい表現やコミュニケーションの場を作る芸術表現を意味している。

本展では、水戸芸術館現代美術センターにて2007年に開催された展覧会「夏への扉-マイクロポップの時代」(松井みどり氏、森司氏の共同企画)の考え方を引継ぎながら、それをより人間的で身体的な方向に展開している、今日の日本の現代美術表現を紹介する。

※全文提供: 原美術館

最終更新 2009年 5月 23日
 

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