加茂昂展「逆聖地」 |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2016年 3月 19日 |
2014年、アートプロジェクトに参加するため対馬に滞在した加茂昂は、山の中にはみだりに立ち入ることのできない聖地があると、地元の人に教わりました。樹木が伐採されずに残った緑豊かな山からは栄養分に富んだ水が海に供給されるため、聖地という形での森林の保護は漁業に役立っていることも知りました。 ちょうどそのころ東日本大震災を意識した作品を制作し、福島第一原発周辺の立ち入り禁止区域について考えていた加茂は「人間の知識の負の結晶」という意味で「逆聖地」という言葉を思い浮かべました。聖地も「逆聖地」も同じ立ち入り禁止区域でありながら、その成り立ちは正反対。しかし目をそむけずに向き合おうという思いがこのタイトルの背景にあります。 今回の個展では、幅7.3メートルの大作「逆聖地」(2014年、油彩、カンバス、209×730センチ)と100号の新作を含め9点の油彩画を出品します。いずれも雪山をモチーフにしていますが、加茂が描くシャープな印象の山は雪山というよりも登山でいう「デスゾーン」。特定の山ではなく、人間の生存が困難な区域の象徴です。 そして画面に描かれた人が表すのは危険な状況です。火だるまの人はもちろん、装備をした登山者も「一歩踏み外せば死ぬかもしれない」という緊迫感を伝えています。風景は感覚によって空間を解釈したものですが、その感覚は純粋なものではなく、状況とかかわっていることを明らかにしています。 全文提供:橘画廊 会期:2016年1月20日(水) 〜 2016年4月2日(土) |
最終更新 2016年 1月 20日 |