hand vase |
アートワーク |
執筆: 小金沢 智 |
公開日: 2009年 2月 12日 |
直方体のコンクリートの上にマネキンの手が置かれている。白い手袋をはめたその手は円筒形の容器を持ち、水をわずかに浸したその中には花がいけられている。《hand vase》は、東が2005年に構想した作品。曰く「人間の手を花器にみたて花をいけた」作品であり、それぞれの手は異なる花/植物を携えている。手のポージングから私が真っ先に想起したのは仏像だった。 仏像の手の形や組み方には意味がある。印相と呼ばれるそれは基本的に両手からなるものの今回の作品は片手のみで独立し、そもそも形がまったく同一ではないのだが、東が印相の働きと同様手の形に何らかの象徴的意味合いを籠めようとしたことは間違いない。というのは、用いられた花/植物のほとんどが白と緑を基調とした、視覚的に優しい色合いのもので、それがとても静かで、かつ清らかなイメージを人に想起させようとするものだったからである。加えて、展示室最初に展示されていた手が内に携えていた、全体が人の指のように分かれている黄色い実。今回の展示のメイン・イメージとして用いられたその実の名は「仏手柑」と言い、「仏」と「手」をその名称に有しているのである。けれども、だから私は仏像や印相などと書いたのではない。花/植物を包み込む、あるいは掴み取るその手の形は優しさに溢れ、人智を超えた存在を意識させるに十分だったのである。 作品詳細アーティスト: 東信 |
最終更新 2015年 11月 01日 |