田中真吾:踪跡 |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2010年 10月 19日 |
田中真吾は火で紙を焼いた作品を制作しています。幾重にも重ねたまっ白な紙に炎を走らせると、焼けた亀裂から炭化した紙が次々とまくれあがって盛り上がり、墨色の灰の襞となります。白と黒のコントラストは涼やかで、しかし炎の記憶を秘めて熱を感じさせます。それは黒い花に残る傷跡のような揺らめきの感触です。 人類の誕生から、火は闇に光を与える文明の象徴として常に私たちの身近にありました。時としてそれは本能的な恐怖である一方、人を惹きつけ、魅了してやまない存在でもあります。炎を見つめる時の、止め処もない心象風景。その根源的に湧き上がる心の動きを、田中は火が持っている性質を引き出しながらきわめてシンプルなかたちで表現し続けています。 「trans」シリーズでは、白い紙を何枚も重ねた支持体を燃やし、火がものを灰へ変容させる力、トランスレーションをテーマにしました。支持体は平面のみならず、キューブ型の立体へも展開します。有機的な火のかたちが完成された幾何学形態をゆらがせ、立体の奥から炎が立ち昇ったかのようです。「heat」ではパネルの上の漆喰、「drawing」では画用紙を。ただ燃やすという行為の中で何が見えてくるのか様々にアプローチしてきました。 作家は27歳。大学では洋画を専攻していましたが、三回生の時から現在に続く火を用いた作品の制作をはじめました。関西を中心に発表を重ね、今展が東京での初個展になります。 田中真吾 ※全文提供: INAXギャラリー 会期: 2010年11月1日(月)-2010年11月24日(水) |
最終更新 2010年 11月 01日 |