谷口和正:moon songs |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2013年 7月 24日 |
2013年8月16日(金)から8月28日(水)までの12日間、gallery nearにて、谷口 和正 展「moon songs」を開催いたします。 活動当初から主に「鉄」を素材に作品を生みだしてきた谷口は、武蔵野美術大学 彫刻科を修了したのち、様々な公募展に出展・入賞、グループ展や 個展も数多く開催してまいりました。また、パブリックコレクションとして、パークハイアット上海 88F スイートルーム共有部分に作品が展示されるなど、 経歴を着実に積み重ね、作家としてのキャリアは今年で25年を数えるに至ります。昨今では、「HANARART はならぁと」(2011・2012)や徳島LED アートフェスティバル(2013)といった地域に根ざしたアートイベントにも出展することで、美術関係者だけでなく、その土地土地の一般鑑賞者をも巻き 込み、卓越した技術と経験によって創造される造形物、光と影が生み出す幻想的な空間で多くの人々を魅了し、鉄を扱う作家の代名詞的存在として 現在も進行形で活躍の場を広げております。 谷口は鉄という重厚かつ強固な素材を用いながらも、表現される形状はおよそ鉄という素材からは想像もつかない程、繊細かつ生命力に溢れて おります。「RE:BIRTH」(neutron / 2009)と題された個展では、天に向かって伸びる植物をイメージさせる作品を会場に配置し、まるで生命が溢れる 自然豊かな湿地帯のような空間を生みだし、また、今年6月に開催された個展「FRAGILE 4」(橘画廊 / 2013)では、切り絵作家の「いしかわゆか」と コラボレーションした作品「metamorphose ”cutout paper and iron”」において、鉄と紙という物質的な強度・イメージでは相反する素材同士を 融合し、同じモチーフ(蝶や草花)をお互いの素材で表現・展示することで、鉄と紙の境界を曖昧にし、素材同士、またモチーフがまさに「metamorphose(変態)」していく様や、生命力の儚さと強さを見事に表現してみせたのも記憶に新しいところであります。 谷口の作品を語る上で何よりも忘れてはならないのが「音楽の存在」であり、谷口の表現における根源と言えます。職人的な技術で鉄を溶断し、 切り出された無数の英文字達は、自身が好む音楽のタイトルや歌詞などから引用されており、作品の形状によって組み合わされ、浮かび上がる それらは、形をなさない音楽・言葉を3次元化していきます。その緻密かつ相当な時間を要する作業から生み出される作品は、鉄でありながらも、 その洗練された形状からか、重量感や強硬さを感じさせず、持てば力を入れずともふわっと持ち上がるような軽量さを思わせます。作品に組み込まれた LED照明の光により、切り出された文字達はまるで命を吹き込まれたように一気に空間に広がり、拡散された文字達の幻想的な光と影がもたらす 世界に、ただ、身を委ねるだけで、聴覚を介して感じていた音楽の世界を身体全体で感じることができるのです。 光と影、陰と陽、そして、鉄という強固なイメージを持つ素材を扱いながらも「FRAGILE(こわれやすいもの)」と題したタイトルを用いるなど、谷口の 根底にあるテーマは、相反するものの共存、人間自身が持つ強さと弱さを表現しているようでもあります。 「moon songs」と題された本展は、生命のサイクルを象徴する月をモチーフに、文字通り「月」をテーマとした音楽のタイトルや歌詞から引用され、 表現された作品をメインに構成されます。鉄が持つ特徴でもある「錆」を上手く作品に取り込み、月の満ち欠けを表現した作品や、作品から拡散 した影をトレースしたドローイングなど、長きに渡って真摯に表現と向き合ってきた谷口だからこそできる、素材を自在にコントロールした、まさに 珠玉の作品が並びます。月が生み出す光と影、3次元化された音楽達が空間全体と我々を包むように静かに共鳴しはじめることでしょう。 本展をぜひ、貴媒体にてご紹介いただき、広くPRくださいますよう、何卒よろしくお願いいたします。 [作家コメント] [作家プロフィール] オープニングイベント「Art&Music Porcupine vol.2」 全文提供:cafe dining near ∽ gallery near 会期:2013年8月16日(金)~2013年8月28日(水) |
最終更新 2013年 8月 16日 |