山田啓貴:語りかける静物画 |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2012年 9月 20日 |
精密な描写の中に現れる沈黙と言葉。山田は、ルネサンス時代の古典的な技法で作品制作をしています。油絵の具とテンペラを薄く何度も塗り重ねる事で独特の質感を生み出し、触れてしまいたくなる程の繊細な透明感と存在感を放ちます。 描かれるモチーフは、食物や道具など、私たちの身の回りにある素朴なものたちです。独特の構図により生まれる空白の画面からは、作品に意味深な表情を持たせます。今その一瞬を捉えるのではなく、個人的で普遍的な事象がそれぞれのモチーフに託されています。そして私たちは思わず、それを自分の中に秘めた断片的な記憶と重ね、結びつけてしまうのです。誰にでも捨てきれないものがある様に、大切な記憶を宿したものがある様に、そんな感覚を呼び覚まします。 ありのままの姿を捉えながらも、その向こう側にある誰かの何らかの過去や想いを訴えかける静物画。何かを語りかけ、ある日を思い出させるかの様に、広く静かな空間にひっそりと佇みます。それは物を丁寧に作り大事に使う事の美しさをも感じさせ、現代の溢れる物欲に対する道徳美を見つめなおす事にも繋がるのです。 [作家プロフィール] 全文提供:Bunkamura Box ギャラリー 会期:2012年10月23日(木)~2012年10月31日(水) |
最終更新 2012年 10月 23日 |