展覧会
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執筆: カロンズネット編集3
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公開日: 2012年 6月 26日 |
この度、ベイスギャラリーでは下記の要領で馬場俊光展を開催いたします。
馬場は匿名の風景を描き続けてきました。 そこでは人影もなく、音もない静かな画面が広がっているばかりです。 平たい画面を作るためにアルミのパネルを用い、それに何度も色彩を重ねながらも、筆の痕跡を残さ ないのは従来の手法と変わりません。 それはむしろ夢の中で私達が見てしまう風景に近く、却って生きている私達に強いリアリティーを持 って迫ってきます。描いた痕跡は夢の障碍にでもなるかのように描く行為は消し去られているのです。固有の色彩から離れ、空気や風が持っていたであろういくつかの色彩だけを選び柔らかな重層を創り 上げています。 その微妙な階調は夢の中で立ち尽くす経験を私達に思い出させ、絵画が深く見る者の内部に侵入する 経験を味わうことが出来るものです。
本展は当画廊での2度目の個展となります。 どうかご高覧の上、広くご喧伝賜りますようご案内申し上げます。
[作家コメント] 私は長野県長野市の川中島という町に生まれ、そこで 18 年間を過ごしました。 「川中島」はその地名のとおり、2 つの川(信濃川と犀川)に挟まれたところです。 山と川に囲まれ、夏に桃畑が甘い香りを漂わせ、秋には稲穂が夕陽に輝く自然の豊かな地域です。 私はそんな町の風景の美しさを享受し育ってきました。今東京で暮らしていても思いもかけず背後に懐かしい風景が立ち現われることがあります。 私の描く風景は匿名のものばかりです。膨大な緑が幾重にも重なり、その上を青い風が吹き抜けるそんなどこにでもある風景だけが私を捉えて離しません。描こうとするのは特定の何かではなく、既に私の中に沈積した何かであってそれは明確な形、特定の場所の姿を帯びてはいないのです。夢が現実より、ともすればリアルであるように、私は時の経過と共に変質しどこかに隠れ、見失った自分の場所を確かめ、更にそこに帰還しようとしているのかもしれません。細部を失い、わずかな色彩を用いてこそ豊かな記憶へと帰って行くことが出来るように感じるのです。 表現が自らを確かめていくことなら、繰り返しわずかな色彩と形を借りてゆっくりと自分を組成した記憶の場所に戻って行こうと思っています。
2012 年 5 月 馬場俊光
[作家プロフィール] 馬場 俊光 Toshimitsu Baba
1981 長野県生まれ 2001 法政大学 工学部建築学科 中退 2006 多摩美術大学 美術学部絵画学科油画専攻 卒業 2008 多摩美術大学 大学院美術研究科修士課程 卒業 東京在住
主な個展
2009 ベイスギャラリー(東京)*個展 2012 ベイスギャラリー(東京)*個展
Opening reception: June 15, 18:00 - 20:00
全文提供:ベイスギャラリー
会期:2012年6月15日(金)~2012年7月31日(火) 時間:11:00 - 19:00 休日:日・祝 会場:ベイスギャラリー
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最終更新 2012年 6月 15日 |