濱口健:Selected Old Stuff Vol.1 |
展覧会
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執筆: 記事中参照
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公開日: 2011年 9月 18日 |
濱口健「Selected old stuff Vol.1」展によせて 山口裕美(アートプロデューサー) 2008年春、「Power of Japanese contemporary art」(アスキー)を出版した直後、高橋コレクションで有名な高橋龍太郎先生から「濱口健さんに興味がある」との連絡を頂戴した。本人を連れて、田町の高橋クリニックを訪問した日が懐かしい。2,3回グループ展に参加しただけだった濱口健の作品は、即座に高橋コレクションに加わり、2008年から2009年にかけて全国を巡回した「ネオテニー・ジャパン‐高橋コレクション」展で展示はされなかったものの、カタログのP156、P157の両開きに神楽坂の高橋コレクションでの展示風景が掲載された。これはこれから始まるであろう濱口健伝説の1つである。
その濱口健が満を持して、初個展を開催することになった。場所は銀座のメグミオギタギャラリー。展示空間の広さと地場の持つ魅力には定評がある。荻田さんと連れだって濱口健のアトリエを訪問し、新作を見てきたが、そのクオリティーの高さに私も荻田さんも舌を巻いた。 海外で日本の現代アートの魅力についてレクチャーをする時、私は日本人画家のデッサン力を挙げる。さらに斬新な画面の構成力も付けくわえる。どちらも兼ね備えていることが、世界へ押し出す日本現代アーティストの条件だと思っているからだ。 濱口健の作品は、見た目よりもかなり手間がかかっており、例えば、妖艶な金髪女性のしどけない姿を描いたのち、その上から石碑に描かれているような古漢字を描いていく。さらにその上にショベルカーを加えて描いたりする。金髪女性の絵だけでも面白いし、文字だけでも面白い、ショベルカーの存在感も圧倒的だ。しかし、これでもか、というように上からかぶせていってしまう。「もういいんじゃないの?過剰にしなくても」と言いたくなるのだが、彼のコンセプトの中心にどうも「台無しにすること」があるようなのだ。台無しな絵画を完成させるための労力を厭わない画家とは! ときどき、私は濱口健はまだ自分のパワーの8割くらいしか出していないのではないか、と思ったりする。余力を残しつつ、次のもっと面白い絵画に狙いを定め、描き出す。人が自分の作品を通して、喜んでくれたり、笑ったり、意味深に考え込む姿を楽しんでいるとしか思えない。この手のタイプの他の画家の存在を私は知らない。ユニークで貴重なカテゴリーの画家の登場だ。どう考えて見ても、非凡な才能である。
全文提供: メグミオギタギャラリー
会期: 2011年11月15日(金)~2011年12月3日(土) 会場: メグミオギタギャラリー
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最終更新 2011年 11月 15日 |