岸幸太:The books with smells |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2011年 7月 13日 |
岸幸太はこれまで、「傷、見た目」や「もの、しみる」といった写真展において、東京の山谷、横浜の寿町、大阪の釡ヶ崎と同じ町を繰り返し撮影し制作をしてきました。作品の多くはこの町に暮らす人の姿を写し出しています。「人への興味はその人の持つ傷、見た目から始まる」と岸が語るように、人が持つ見ることを躊躇してしまう傷、無視してしまう生を見続ける姿勢は変わることがありません。 本展では、これまで撮影された写真を新聞紙や週刊誌、折込チラシなどにレーザープリンタで出力し、自ら製本した作品が展示されます。岸の写真が各地のニュースや出来事を伝える新聞記事や、求人広告の上に強引に重ね刷られ綴じられたこの本は、この町で暮らす人々の生と自分自身の生が地続きであることをあらためて私たちに気づかせます。 大阪市西成区萩之茶屋、町の外れの路地を曲がると、いつでも湿って汚れている壁がある。そこには、小便や大便の跡、その強烈な臭気とともに捨てられた衣類、生ゴミ、新聞、酒ビンが転がる。咽せるような町の空気を吸い込む。歩いて汗をかけば、この町と同じ匂いの汗が流れているようだ。その匂いと汚れがしみついた本をつくる。それは私にしかできない。 岸幸太 KISHI Kota 全文提供: photographers' gallery 会期: 2011年8月23日(火)-2011年9月30日(金) |
最終更新 2011年 8月 23日 |