安藤栄作 展 |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2009年 12月 20日 |
安藤栄作(あんどう・えいさく)は、彫刻用に材料を購入するのではなく、間伐材や家を取り壊す際にでる廃材など、自然と手元にやってきた木材に、手斧をひたすらに振り降ろし、叩くことで作品をつくりだしていきます。東京生まれの安藤は、自然とともに暮らす生活に憧れ、1990年福島県のいわき市に移り住みました。森の中や海辺に住まいその時に感じるままに生み出される作品は、いわきの森や海の上を吹き抜ける風、土地からの蒸気をたっぷりふくんだ雲、うさぎやいたちなどの動物の姿をかりた、いきとし生ける万物の精神です。あらかじめ決めた形をきっちりと作り出すというより、一打一打木と語り合いながら生み出されるその荒々しいテクスチャーと有機的なフォルムは、抽象や具象の境なく、存在の根源を思わせます。安藤にとって叩くこと(作ること)は、食べることや寝る事と並ぶ日々の生活の行為であり、アーティストであることが生活に根ざした必然だからこそ、その作品は逞しくわたしたちの命を讃えます。 近年、その作品はより一層形作ることにとらわれず、勢いを増し、存在そのものへと立ち返っているように感じられます。APSの展示では、会場で描かれた壁面全面を覆うような大きなドローイングと、最新彫刻作品を展示いたします。常に変化し続ける安藤が、2010年の今このときに、APSの空間と対話し、どのような作品をつくりあげるか。みなさまと一緒に体験できればと思います。 安藤 栄作 ANDO, Eisaku 主な個展: 全文提供: a piece of space APS |
最終更新 2010年 1月 13日 |
トーテムポールを思わせる柱のような作品ひとつ。柱状に顔がいくつも彫られている。木の表面を見ると、ザラザラと叩かれたようにざらついている。それは、手斧で叩かれることによって制作されるからなのだという。一見それは暴力的に見えるかもしれない。だが、ギャラリーの壁面全面を使ったラフなドローイングを見て納得する。もしかしたら、安藤がたった1つの手斧で作り出す彫刻とは、ドローイングが持つラフで、奔放な作品なのだと。 すると、手斧1つで作り出される彫刻も暴力的どころか、手斧の力加減や微妙な刃先の角度など、使い込まれた手の思考がなければ出来ない繊細な仕事であることが分かる。しかし、目の前のある作品はそんな繊細さを笑うように顔がこちらを見つめていた。