展覧会
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執筆: 記事中参照
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公開日: 2014年 9月 29日 |
はるか昔、国境も、正確な地図も、どこにもない時代に、海の上を旅した人々がいました。その世界では、どこの海も陸も、誰のものでもありません。私たちの遠い祖先は、海の流れにのって島を渡り、食料を運び、道具や技術を伝えてきました。 占部史人は、海に浮かぶ「島」を作り出し、その想像力によって美術館の展示室を海の風景へと変化させます。その海に浮かぶのは、流木で作られた「舟」です。どこか遠くの場所から流れてきたその流木は、占部の手によって、かつて私たちの祖先が乗っていたであろう舟をイメージした形を与えられています。そして舟はまさに流木で出来ているために、彼の手を離れて、いずれは作品としての形を失い、朽ち果てていくものであることをほのめかしてもいます。 占部の海は、ほとんど無限に長い時間の中にある海です。あらゆるものが「誰のものでもなくなる」と仮定すること。「誰のものなのか」を明らかにするのではなく、「誰のものでもなかった」ことを想起すること―その態度は、近代的な合理主義の考え方ではなく、東洋の仏教的な世界観に沿うものです。 彼が作り出す「7つの夜の海」は、私たちの生活をどこかで息苦しいものにしている現代社会の価値観をゆるやかに解きほぐし、どこまでものびやかな広がりをもった世界の一部であることを示します。
[作家プロフィール] 占部史人(うらべ・ふみと) 1984年 愛知県西尾市生まれ。 2008年 愛知県立芸術大学美部彫刻専攻卒業、 2013年 同大 学美術研究科博士後期課程修了。 愛知県在住。
全文提供:愛知県美術館
会期:2014年10月9日(木)~2015年1月12日(月) 時間:10:00 – 18:00 金曜日は20:00まで(入館は閉館30分前まで) 休日:月曜日(ただし10月13日[月・祝]、11月3日[月・祝]、11月24日[月・振替休]、1月12日[月・祝]は開館)、10月14日(火)、11月4日(火)、11月25日(火)、12月8日(月)-11日(木)、年末年始(12月28日[日]-1月3日[土]) 会場:愛知県美術館
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最終更新 2014年 10月 09日 |