遠藤友美恵:裏切る |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2014年 1月 06日 |
2014年1月17日(金)から1月29日(水)までの12日間、gallery nearにて、遠藤友美恵 展「裏切る」を開催いたします。 遠藤は、嵯峨芸術大学において、美術や文化に関する知識を学ぶかたわら、染色の技法を用いた作品を次々に発表し、様々な公募展、グループ展に出展するなど精力的に活動してまいりました。関西のみならず、中部、関東で開催されるグループ展にも積極的に出展し、年を追うごとに着実にその実力と知名度を上げてまいりました。2006年に開催された「第10回フラッグアート展」(岐阜)では岐阜市賞、2007年「京展」(京都市美術館 / 京都)では、館長奨励賞を受賞するなど、活動当初よりその繊細な感覚を染色で表現した作品は注目を集め、2010年には「京都アートフェア2010」、「神戸アートマルシェ」、2011年「京都アートフェア2011」、2012年「ART KYOTO 2012」と立て続けにアートフェアに出展する機会を獲得、美術業界の評価のみならず、幅広い層のファンを魅了し、これからも各方面から多くの期待が寄せられる染色作家の一人であります。 遠藤は、色とりどりに染め上げた綿布を木製パネルに施し、一見、水彩画のような淡く美しい画面を表出します。しかし、その画面に内包されるものは、表層上だけではおよそ計り知ることは出来ない、遠藤自身の心象そのものであります。初期の作品では主にネガティブな感情を綿布に染め映したかのような、染色という一般的にイメージする「柔らかく」「優しげ」な印象を覆す、ドロドロとしたどこか染色の域を超えた迫力を備える画面を生み出しておりました。制作を重ねて来た現在では、負の感情だけではなく、その時感じた「空気」を何よりも重要視し、その時にしか出せない「色」として変換することで、独自の配色・形を更に追求しております。染色という様々な環境に影響を受け、完全にコントロールすることが難しい技法で表現しようとする行為は、遠藤自身の心の奥深くに潜む言葉にできない、また、自身でもコントロールしきれない様々な感情と合致し、画面に表れる色や形はまさに、今、その瞬間の遠藤を取り巻く環境(いつ・どこで・誰と・天気・温度・年齢・・・)における心象を浮き彫りにしていくようであります。 遠藤の作品には特徴的なタイトルが付けられており、表現における核とも捉えることが出来ます。「ブラックメリーゴーランド」(2012)と題された作品では、全体に薄暗い画面の中央に確かにメリーゴーランドのような形を見出すことができ、一歩その遊園地に足を踏み入れると二度と戻って来られないような、妖しげな雰囲気を醸します。「あなたのアイス」(2013)では、ぼかしや滲みによって溶け出すように滑らかな凹凸を生み出し、「2012/12/14 2:21a.m.」(2013)では、まさに前述した、今その瞬間の空気・感情を、その時の色や形に変換し、画面に閉じ込めたような新鮮さを感じることができます。いずれの作品も、画面にあるのは抽象的表現でありつつも、タイトルから想像されるものを見出そうとするとき、それは具象を見る行為にも感じられます。タイトルと染色が生み出す画面が絶妙なバランスを保つことで、観るものが各々に想像力を働かせ、様々なものに形状していくことを促しつつも、作家が意図するものを意識下にすり込ませるような絶妙な表現がそこにはあり、遠藤の表現が持つ奥深さに気付かされるのであります。 本展は「裏切る」と題され、インスタレーション作品を含めた待望の新作展となります。この刺激的なタイトルに内包された遠藤の強い思いは、作家として活動を始めた当初から、表現の高みを目指しひたむきに積み上げてきたことによって、無意識に生まれてしまった自分自身の表現、鑑賞者が抱く、遠藤作品への概念を如何に「裏切る」かをテーマに制作しており、作家としての新たなステージへの挑戦、意気込みが感じられます。染色と向き合うことで自分自身とも対峙し続け、また、その一瞬一瞬を作品に昇華してきた中で生まれた疑問の数々に答えを出すべく、表現された新作の画面には、遠藤の飾りのない更なる心象をさらけ出した、良い意味での「裏切り」が期待できるのではないでしょうか。 [作家プロフィール] 全文提供:cafe dining near ∽ gallery near 会期:2014年1月17日(金)~2014年1月29日(水) |
最終更新 2014年 1月 17日 |