太田篤 展 |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2011年 5月 26日 |
『 裏付けを表に出してどうするんだ 』TVCMの一こま、画面いっぱいに強面俳優が発した一言に思わず笑ってしまった・・・。多くの時間を他事に費やし中断されがちな制作のなかでは、いま掴んだ手応えも明日は何処にとなりかねない。名詞も図解的要素もなく、ただ形容詞と状態だけで語ろうとするのなら尚更だ。繋ぎ留めるべく言葉を探し、論理化を試みる。新たな感覚と展開の可能性もそこには生まれる。然し乍ら、言語によって論理化されたそれは中心に触れることなく螺旋状に上昇していく。気付けばそれは、輪郭と方向性の整理であって中身ではない。説明を求められ饒舌になってみても、語っていることはこの域を出ない。TVCMの一こまが、ナンセンスを超えて僕の中に余韻を残しているのはそのことに関係しているのかも知れない。 太田篤 個展 全文提供: ギャラリーなつか 会期: 2011年5月30日(月)-2011年6月11日(土) |
最終更新 2011年 5月 30日 |
展覧会場には、両手を広げた位の大きさの絵が6点と、手のひらを並べたような小さな絵3枚。ぼんやりと観ていると、どの作品も、白い地の画面に黄色やオレンジ、赤褐色で、動きを表すようにゆがんだ正方形や長方形が描かれている。
近付いて観ると、白や黄色やオレンジや赤褐色の色の隙間から、緑や水色がちらりと覗き、下に寒色が塗られていたことに気がつく。
なにやら、眼の前の平面に、奥行きがあったことに気がつかされる。平たい四角だと思っていたものが、おどけて動いてくれたお陰で奥に隠されていた重なりが見えてくる。その重なりの隙間には指さえ挟みこめないだろうけれど、確かにあるのだ。平面を鏡面にして、どこまでも深く世界が広がっていく。