蓜島伸彦:deep river |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2008年 11月 29日 |
“sunshine” 2008 Acrylic on canvas 41x41cm copy right(c) 2008 HAIJIMA Nobuhiko. Courtesy of Galerie Tokyo Humanité 蓜島伸彦(はいじまのぶひこ)は1970 年東京生まれ。東京造形大学版表現コース、大学研究科を経て90 年代後半から展覧会活動を始めました。その後すぐに東京オペラシティアートギャラリーのコレクションとなり、収蔵品展に展示。さらに近年は精力的に個展や国内外のグループショウ(東京都現代美術館「MOT アニュアル2002」、ソウル省谷美術館「eleven &eleven コリアジャパンコンテンポラリーアート2002」など)に出品。そのシンプルな中にもインパクトのある作品は注目を集めました。 蓜島は型紙(ステンシル)を用いて、主に雑誌など既製の印刷物や、写真、映像から抽出された動物や植物をモチーフに絵画を制作しています。それらの作品は対象を極度に簡潔化し、時にはほとんど抽象画のようにさえみえますが、同時に描かれた対象が物語性を感じさせ、抽象と物語、静と動、光と闇、正確さとあいまいさなど、通常は二律背反するもの(アンチノミー)が不思議と共存するシンプルな画法で、極めて複合的な絵画作品となっています。 蓜島自身の言葉によれば、絵画上の空間やテクスチュア、イリュージョンを操作することによって、絵画でしか獲得することのできない「ある感覚」の実現を目指しているといいます。その「感覚」は彼なりの絵画史の解釈の末に抽出されたもので、時に彼の愛好する他の芸術ジャンル、音楽や詩に共振するような種類のものであり、その意味で蓜島はオーソドックスな芸術を信奉する極めて正統的なアーティスト、画家であるといえるでしょう。 ぎりぎりまで切り詰められたそのシンプルな絵画作品は、観る人の想像力の内部に様々な事象を喚起させます。都市生活の孤独や、喜び、悲しみ、ほのかな希望といった感情。ここで作品は観る人の想像力を発動させるスイッチのような役目を担い、特に複数の絵画作品が並ぶ個展会場においては各作品が共振し合い、観る人ごとに無数のストーリーを紡ぎ出すことでしょう。 モチーフが動物(時に植物)に限定されていることについて、蓜島はそれらを単に形式的、抽象的なフォルムとしてとらえていると同時に「仏教美術における涅槃図の伝統を意識している」といいます。 また動植物のモチーフが結果的に「絵を観る人=人間というモチーフを浮かびあがらせることになる」とも語ります。「観る人自身が図として浮かび上がる」人間不在の世界を描く蓜島は、間接的な手法で人間という普遍的なテーマを追求しているといえます。 本展はギャルリー東京ユマニテにおいて4年ぶりの新作展となり、100 号から小品までのキャンバス作品を中心に約20 点で構成されます。ますますパワーアップした蓜島の新作展、今回も是非ご高覧いただけますようご案内申し上げます。 作家コメント
※全文提供: ギャルリー東京ユマニテ |
最終更新 2008年 12月 15日 |