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名知聡子:About Him
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2013年 8月 19日

MANAMI, 2013 © Satoko Nachi

名知聡子にとって絵画は自らの気持ちを語る相手であり、彼女はある時期の自分と正直に向かいながら、様々な感情をポートレートへと紡いでいきます。その多くは自らの経験に基づいた、恋の幸福感と痛み、ある特定の人物への想いです。インパクトの強い大きなペインティングを発表してきた名知は、「作品を見る瞬間は、自分の描き出すユートピアだけを見てほしかったから、視界いっぱいになるようにした」と話します。彼女は象徴的なモチーフを用いながら、まるで小説を書くように叙情的に、緻密な筆致でディテールを広い画面に発展させていきます。そこでは凝縮された当時の感情が、強いエネルギーとともに鑑賞者に語りかけます。

一方、友人の物語も名知が描き続けている画題です。名知の視点からしか見えない魅力を、その本人に見せてあげたいという気持ちからスタートした友人のポートレートのシリーズ。自分を掘り下げる作品とは異なり、冷静さを保ちながら感情を描写することができるため、名知の心境のバランスを整える不可欠な役割を果たすといいます。 膨大な時間と集中力によって生み出される名知の作品は、純粋さやロマンティックさ、そして狂気すら帯びるようなエモーショナルな側面やはかなさなど、女性らしいといえる要素を感じさせます。しかし彼女の作品が鑑賞者を強くとらえるのは、性別を超えた人間の本質として普遍的に存在する痛みや孤独、またそこから生まれる気高さや強さ、美しさが、描かれる人物たちの中に輝いているからなのでしょう。

[作家プロフィール]
名知聡子は1982年東京生まれ、現在は愛知県にて制作活動をしています。2010年の「告白」に続き、本展は小山登美夫ギャラリーでは2回目、シンガポールでは初の個展になります。
主な個展に2008年の東京オペラシティアートギャラリーでの「project N 32」、2013年アートラボあいちでの「ALA Project No.17 名知聡子」が、主なグループ展に、「Wonderful My Art 高橋コレクションの作家たち」(2013年、河口湖美術館、山梨)、「JAPANCONGO」(2011年、Le Magasin - Centre National d\'Art Contemporain、グルノーブル、フランス)、「VOCA展2010 現代美術の展望-新しい平面の作家たち」(2010年、上野の森美術館、東京)、「Passion Fruits Picked from The Olbricht Collection」(2010年、me Collectors Room Berlin、ベルリン、ドイツ)、「花・風景 モネと現代日本のアーティストたち」(2009年、熊本市現代美術館、熊本)があります。

アーティストを囲んでのオープニングレセプション
9月6日(金) 18:00~21:00

 

全文提供:小山登美夫ギャラリー シンガポール


会期:2013年9月6日(金)~2013年10月6日(日)
時間:火 - 土曜日12:00-19:00 / 日曜日 12:00-18:00
休日:月曜、祝日
会場:小山登美夫ギャラリー シンガポール

最終更新 2013年 9月 06日
 

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