展覧会
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執筆: カロンズネット編集3
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公開日: 2012年 10月 26日 |
大竹利絵子は樟や檜、桂などをもちいた木彫作品を制作しています。作品のモチーフは人や鳥などが多く、具象的なものでありながら、中性的な体躯や深遠な表情は、宗教彫刻のようでもあり、抽象的で神秘的な印象を与えます。 大竹は2009年の展覧会に際して行われたアーティストトークの中で、素材としての木から顔をつくろうとするとき、目と鼻と口ができればすぐに顔として見えてしまうことが逆に怖い、あるいは、かたちを意味で説明するのではなく、かたちから作品の世界を広げていきたい、と話しました。彼女は表面的な人らしさや鳥らしさの表現にとどまることなく、人の人であるところのもの、鳥の鳥であるところのもの、といったものを、木の中から掬いあげてみせます。 また大竹は一貫して、彩色しない木の素地仕上げの手法を用いています。それは木の生々しさや美しさを損なわないための配慮であり、作家にとって木が、単に作品の材料ということ以上の役割を果たしていることのしるしなのです。たとえば、小山登美夫ギャラリーでの初個展で発表された「とりとり」(2008年)という2点の作品は、1本の木を2本に半割りにした材からつくられていますが、半割りにする際に斜めに切れてしまったことから、その2本の木を活かして、前傾の人と後ろに傾いた人の2作品ができました。 木と呼吸をあわせるような、彼女の丹念な制作への取り組みかたは、独特の佇まいとなって作品にあらわれます。
本展覧会は、江東区清澄の小山登美夫ギャラリーの7Fの大きなスペースを使った、大竹にとってはじめての展示です。2メートルを越える少女の立像や男の子、鹿やカモなど、木彫作品10点ほどが展示される予定です。展覧会タイトル「たぶん、ミミ」の「ミミ」は、大竹自身も会ったことがない知らない子の名前です。「まだ知らないことや、あることとないこととその間のことについて、作品と展示構成で探りたい」と、彼女は展覧会について説明します。これは大竹が継続して取り組んでいるテーマで、美術評論家の峯村敏明は前回の個展「夢みたいな」についても、大竹の「存在」についての考察の深さを、次のように書いています。
まだうら若い(だろう)作家が、自らの内にたゆたう少女めいた心性を、あることの不確かさ、両義性へと柔らかく客観化し、さらに「われ」と「かれ」、「大なるもの」と「小なるもの」、「ここ」と「かしこ」、「今見る世界」と「いつか見た世界」等の二貢間で分有される感覚、空間的・構造的把握へと着実に進み出しているではないか。(中略)並の抽象彫刻も及ばぬ的確さで彫刻の中心命題たる「存在」の不可思議にぴたりと錘鉛を下ろしているかに見えることの、何という心憎さ。 (峯村敏明「止まり木が鳥でもあるような ―大竹利絵子の木彫に寄せて―」『Rieko Otake Dreamlike』2010年)
今年5〜6月に渋谷ヒカリエの8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery で開催された、大竹利絵子・川島秀明・小出ナオキの3人展で、はじめて大竹の作品をご覧になった方もおられるかもしれません。大型の作品をまとまってみられるこの機会に、ぜひご来廊ください。
[作家プロフィール] 大竹利絵子は1978年、神奈川県生まれ。2002年に東京藝術大学美術学部彫刻科を卒業。2004年同大学院美術研究科彫刻専攻修了、2007年同博士課程を修了しました。現在も神奈川を拠点に制作活動を行っています。 2005年第9回岡本太郎記念現代芸術大賞展入選。作品は高橋コレクションに収蔵されています。2007年には東京藝術大学大学美術館陳列館でのグループ展「物語の彫刻」に、昨年は台湾のSoka Art Centerで開催されたグループ展「續・彩虹 As Long As Rainbow Lasts」に出展しました。小山登美夫ギャラリーでは、2008年の「とりとり」、2009年の「夢みたいな」に続き、3回目の個展となります。
オープニングレセプション 11月17日(土) 6:00 - 8:00pm
全文提供:小山登美夫ギャラリー
会期:2012年11月17日(土)~2012年12月15日(土) 時間:12:00 - 19:00 休日:日・月・祝 会場:小山登美夫ギャラリー
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最終更新 2012年 11月 17日 |