【作品紹介】 蜷川実花の作品を前にするとき、わたしたちはまずその華やかな色に目を奪われます。そこに写っている花、人物、金魚などの対象は、こちらの感情、あるいは非現実的な世界をも喚起するような色彩を与えられています。深く濃い赤、目の覚めるようなブルー、甘美なピンクなど。これらの色は光をまとい、そこからは生命の豊かさや美しさというものを掴み、とどめようとする蜷川の一貫した試みをとらえることができます。またその光の裏には影、静かに滲み出る闇の存在があります。この影の存在は、これまでの蜷川の膨大な作品群にも散見することができます。表裏一体の光と影、そこには蜷川の写真を撮ることへの姿勢がよく表れています。自身の表現の全体像を提示すること。それに極めて自覚的に作品をまとめ、展示したのが、2008年から2010年にかけて5カ所の国内美術館等で開催された、「蜷川実花展-地上の花、天上の色-」でした。
この展覧会において最新作として発表されたシリーズ「noir(ノワール)」はその闇、また「裏蜷川実花」ともいえる世界を表現しています。「地上の花、天上の色」という言葉が表すような、圧倒的な色彩で知られる蜷川が提示する「noir(暗黒、黒)」は、色彩の深度を強めることによって浮かび上がらせた「極彩色の闇」です。眩しい生の世界と、深い死の世界。生死のバランスに介在する人の手が浮かび上がらせた歪な世界。生と死の極点に向けて、その領域を膨張させ深化させ続けた写真世界は、圧倒的で暴力的な生命力と、深く歪な極彩色の闇を感じさせます。
【この展覧会について】 本展は、上記のシリーズ、「noir」だけで構成される初めての展覧会です。新シリーズですが、属する作品には以前から手がけていたものも含まれ、じっくりと制作されてきました。これまでの蜷川実花とは別の面、それでいて根源的な面ももつ作品を、是非ご高覧ください。また同シリーズは作品集「noir」(河出書房新社、10月22日発売、税込価格¥2,730 164頁)としても発表されます。以下は作品集の帯に記載されている、蜷川執筆のあとがきからの抜粋です。 「花は枯れながらも咲き乱れ 愛玩動物達は今日も檻の中 新しい生命はひたすら生まれまくり 一日一日死に向かって生き続ける 眩しいくらいに」(あとがきより) こちらの作品集も是非ご高覧下さい。
【作家プロフィール】 蜷川実花は東京都生まれ。1997年多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン科卒業。現在は東京を拠点に制作活動を行っています。第7回写真ひとつぼ展グランプリ(96年)、第13回キヤノン写真新世紀優秀賞(96年)、第9回コニカ写真奨励賞(98年)、第26回木村伊兵衛写真賞(01年)、など数々の賞を受賞。雑誌・広告業界でのキャリアをはじめ、ヴァリエーション豊かな作品集を刊行、また映画『さくらん』(07年)では監督を務めるなど、今最も活躍する写真家の一人です。近刊の作品集には「MIKA NINAGAWA」(Rizzoli, New York、10月発売、税込価格¥7,875 360頁、序文:森山大道)があります。国内外で多数展覧会を開催。12月12日(日)~1月16日(日)の期間、表参道のGyre、”Eye of Gyre”にて上記のRizzoliからの作品集出版を記念した個展を開催。小山登美夫ギャラリーでの個展は4回目となります。
蜷川実花オフィシャルサイト: http://ninamika.com / http://ninamika-m.com(mobile)
展覧会紹介ページ(小山登美夫ギャラリー): http://www.tomiokoyamagallery.com/exhibitions/mika-ninagawa-exhibition-2010/
※全文提供: 小山登美夫ギャラリー
会期: 2010年2010年11月27日(土)-2010年12月25日(土) オープニングレセプション: 2010年11月27日(土)午後6-8時
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