展覧会
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執筆: カロンズネット編集
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公開日: 2009年 11月 29日 |
福永大介は、身近にありながら普段私たちが目にとめることもない取り残された場所、誰からも忘れ去られたような物を描きます。うらぶれた空き地、モップなどの掃除用具、廃棄物。そこには人間の気配も痕跡もありません。福永のペインティングのなかでは、通常付与されている使用価値を脱ぎ捨てるかのようにそれらの物たちはそれら自体で存在し、不気味さやある種魅力的な狂気を放ちます。 工藤麻紀子のペインティングには、日常生活で出会ったごく身近なものが、不思議な心象風景として描かれています。独自の色の感覚と塗り方でもって描かれる彼女の作品は、多層な空間の構成をもち、絵画性の高さの一方において新鮮な現代性も帯びています。個人の記憶から解き放たれ、作品のなかでイマジネーションと結実した女の子、植物、小動物たちといったモチーフは鑑賞者を惹きつけてやみません。 桑久保徹は、自分のなかに架空の画家を見いだすという演劇的なアプローチで制作活動をスタートしました。油絵の具を厚く塗る筆触は、印象派の技法、また絵画性の復権を想起させます。モチーフには色濃い物語性を帯びるものや海、非現実的な舞台のようなものがあり、好奇心や不安などさまざまな感情、そして想像を喚起します。こうして制作を続けるうちに、自身と画家の存在の距離がなくなったと話しています。 「認識する絵というよりは、体感する絵」を目指していると話す大野智史は、ペインティングを中心とした感覚的なインスタレーション、またインスタレーションの様々な要素を一枚で表現するようなペインティングを制作しています。自然と人工の対峙と融合、時間などのテーマを扱い、原生林、自画像などの人物、両性具有、エネルギーの源としてのプリズムなどのシンボリックなモチーフを描きます。 【この展覧会について】 本展では、ペインティングというメディアに対して常に真剣に取り組んでいるという共通点をもちながら、それぞれ全く違うアプローチと技法で制作している4人の作家、福永大介、工藤麻紀子、桑久保徹、大野智史の新作ペインティングを展示いたします。長い伝統を持つ絵画という手法へのあらたな希望、可能性が感じられる彼らの作品を、どうぞこの機会にご高覧ください。 【作家プロフィール】 福永大介は1981年東京生まれ。2004年、多摩美術大学美術学部絵画科油絵専攻卒業。現在、神奈川を拠点に制作活動を行っています。2006年、2008年に小山登美夫ギャラリーでの個展を開催。ダイチ・プロジェクツ(ニューヨーク)での『AFTER THE REALITY 2 curated by hiromiyoshii』(2008)、『現代美術の展望VOCA展2009』(上野の森美術館)などのグループ展にも出展しています。またアーティストグループMIHOKANNNOの一員として、トーキョーワンダーサイト渋谷にて『Hello! MIHOKANNO』(2009)を行いました。同じく2009年、毎日新聞社主催による第1回絹谷幸二賞を受賞しました。 http://www.tomiokoyamagallery.com/artists/fukunaga/ 工藤麻紀子は1978年青森県生まれ。2002年に女子美術大学油画科卒業。現在は東京を拠点に活動を行っています。2002年、小山登美夫キュレーションによるグループ展『フラジャイル・フィギュアズ』(パレット・クラブ)に出展、同年村上隆キュレーションのグループ展『東京ガールズブラボー』(ナディッフ、東京/マリアン・ボエスキー・ギャラリー、ニューヨーク)に出展。その他の主な展覧会に『タイム・オブ・マイ・ライフ 永遠の少年たち』(04年、東京オペラシティーアートギャラリー)、『MATRIX 213: Some Forgotten Place』(04年、University of California, Berkeley Art Museum & Pacific Film Archive、カリフォルニア)、『Pretty Baby』(07年、フォートワース近代美術館、テキサス)、『ネオテニー・ジャパンー高橋コレクション』(08-11年、霧島アートの森から全国巡回)、『ウィンター・ガーデン』(原美術館、東京/ケルン文化会館、ドイツ、09年)などがあります。 http://www.tomiokoyamagallery.com/artists/kudo/ 桑久保徹は1978年、神奈川県座間市生まれ。2002年多摩美術大学絵画科油画専攻卒業。現在も神奈川県を拠点に活動を行っています。2002 年、東京都現代美術館主催のトーキョーワンダーウォール公募2002で「トーキョーワンダーウォール賞」を受賞。主な個展に、『The Woman Living on the Beach』(do ART Gallery、ソウル、07年)『SCENERY OF TOMORROW』(bendixen contemporary art、コペンハーゲン、デンマーク、07年)『Illusion of the Sea Ebbing Away』(Galerie Davide Gallo、ベルリン、06年)、『From Scratch: BLOOMFIELD』(牡丹靖佳と二人展、トーキョーワンダーサイト渋谷、東京、06年)、主なグループ展に『ポートレート・セッション』(広島市現代美術館、広島、ナディフ、東京、07年)があります。 http://www.tomiokoyamagallery.com/artists/kuwakubo/ 大野智史は1980年岐阜県生まれ。2004年東京造形大学卒業、06年同大学大学院中退。現在山梨県を拠点に、制作活動を行っています。小山登美夫ギャラリーでは『acid garden』(06年)、『予言者』(09年)と2回の個展を開催。その他の主な個展に『Prism Violet』(ホノルル現代美術館、ハワイ、07年)、『PHYSICAL TREE』(magical ART ROOM、東京、08年)など、主なグループ展に、『Koshikijima Art Project』(甑島、鹿児島、04年)、『PRAHA project』(札幌、05年)、『ritual』(トーキョーワンダーサイト渋谷、東京、07年) 『THE ECHO』(ZAIM 別館、横浜、神奈川、08年)などがあります。2009年は、『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2009』の、『福武ハウス 2009』(旧名ヶ山小学校)、『neo neo展 Part1 [男子]』(高橋コレクション日比谷、東京)に出展しました。 http://www.tomiokoyamagallery.com/artists/ohno/ ※全文提供: 小山登美夫ギャラリー
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最終更新 2010年 1月 08日 |