渡辺豊 展 |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2009年 10月 04日 |
渡辺豊は、人工物と自然とが入り交じった、奇妙な構築物で風景を描きます。「自然より人工物に囲まれ、テレビに映し出される世界を、目の前で起きている現実だと疑う事なく受け入れ、自然食品よりも着色料に浸かったものを好んで、超常現象やお化け・妖怪・未確認物、そして古代遺跡などの謎に興味を持ち、東京に育ちました。秩序の保たれた生活の中に、無秩序に氾濫する色彩・情報を見て育った私の絵画は、それらの過去を基軸としています」(府中ビエンナーレカタログより)と渡辺は語ります。 前回、小山登美夫ギャラリーで発表された(箱船、避難所の意)シリーズでは、住宅地の中で突然1つの建物の壁が崩落してしまったかのような空白が現れ、そこへ屋内とも屋外ともつかない不思議な構造が立ち上がってくるように描かれました。矩形に折れ曲がった植物と家具が混ざり合い、書き割りのような隣家を背景にして、無言の対話を繰り返しているかのような作品は、未来派やシュールリアリズムの絵画を思わせます。その後、08年に府中ビエンナーレで出展された(Out of Place Artifacts)シリーズでは、より大胆にモチーフが再構築され、描かれる要素が少しずつ間引かれていくほど、画面手前の構築物と背景との構造的な関係性がクローズアップされるようになります。 固有色とはかけ離れた独特の色彩と相まって、渡辺が描く複雑怪奇な風景をのぞけばのぞくほど、私たちは画面に踊る「枝のようなもの」や、背景にたたずむ「家のようなもの」に、既視感と戸惑いを覚えるのです。 展覧会について 作家プロフィール 全文提供: 小山登美夫ギャラリー |
最終更新 2009年 10月 10日 |