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山本桂輔:「地底の雲」
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2017年 5月 13日

©Keisuke Yamamoto

山本桂輔は、彫刻と絵画という二つの領域を横断しながら作家活動を続けてきました。植物や鉱物、天候などの自然界と、そこから生まれる人間の想像力としての精霊めいたものが同化し、不可思議な世界が巧みに展開されます。抽象的要素と絵の具の質感や色彩が組み合わされていく過程で、イメージがおぼろげに浮上してきたかのようなペインティングは、夢で見る事象への視覚性に焦点をあてたアプローチともいえるでしょう。また、彫刻においては近年、捨てられた物やガラクタに親和性を見出し、共存という形で再び「在るもの」へと蘇らせる試みとして、土着的要素の高い作品を制作して注目を集めています。
2年ぶりの個展となる本展では、六甲山の自然との対話の中から生まれ、「六甲ミーツ・アート芸術散歩2016」(兵庫)で山中に展示された彫刻作品を中心に、そこから派生した彫刻やドローイングなどを加え、新たに展示構成されます。一見ファンタジーの断章のようにも見える山本の作品は、自身を客観的に分析し分解することを経て、現実の世界をよりリアルに引き寄せる為に再構築された結果なのです。外界からの刺激が自己の内部と融解し、作品としての「個」が精製されていく過程や、自己を媒介として幻想世界と現実世界を繋げていく際に、緩やかに浮かび上がるグラデーションが観る者を惹きつけます。それは、その時々の状況や思考によって変化する世界と自分の関係性に真摯に向き合い、アートとしての表現に結実させるために試行錯誤を重ねてきた作家の軌跡だからなのでしょう。絶えず発展を続ける山本の作品をぜひご高覧ください。

ブランクーシが永遠性やイメージの解放を天空に見出したとしたのなら、僕はむしろ土壌や地底に親和性を見出す。どうしても逃れられない引力、強迫的な何かというべきかもしれない。ならば、飛翔とは違う純粋性を地底から探したい。大地への信仰や畏敬、地層という時間や歴史、養分や微生物、ライフライン、ケミカルな人工物。地底という混沌とした暗闇の中に軽やかで自由に漂う雲を、僕は見たい。(山本桂輔)

山本桂輔は1979年、東京生まれ。2001年に東京造形大学彫刻科を卒業後、同大学研究生として2003年まで在籍。現在、神奈川を拠点に制作活動を行っています。小山登美夫ギャラリーでは、6度の個展を行っており、主なグループ展に「VOCA展」(2008年、上野の森美術館、東京)、松井みどりキュレーションによる「ウィンター・ガーデン:日本現代美術におけるマイクロポップ的想像力の展開」(2009年、原美術館/世界各地を巡回)、「Twist and Shout: Contemporary Art from Japan」(2009年、バンコク芸術文化センター)、「ノスタルジー&ファンタジー 現代美術の想像力とその源泉」(2014年、国立国際美術館、大阪)などがあります。作品は国立国際美術館や各国のプライベートコレクションに収蔵されています。 また、今年4月に開催された草月創流90周年記念展「HANA SO」では、現代アート作家の一人として招待され、草月流家元・勅使河原茜とのコラボレーションを果たしました。 その際に展示されたインスタレーション作品は大きな反響を呼びました。

http://www.hikarie8.com/artgallery/2017/05/keisuke-yamamoto.shtml

全文提供:小山登美夫ギャラリー


会期:2017年5月24日(水) 〜 2017年6月26日(月)
時間:11:00 - 20:00
休日:展覧会期無休
会場:8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery

最終更新 2017年 5月 24日
 

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