ヴィクトリア・ジットマン:On the Surface |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集3 |
公開日: 2014年 3月 03日 |
ヴィクトリア・ジットマンの描くフランドル絵画のような、硬質で精緻な女性の横顔のポートレートには、しばしば描かれるネックレスがありました。あるとき彼女は、そのネックレスだけを描くことを思いつきます。これが後に、ビーズのポーチやネックレスなどを描くシリーズ「On Display」となります。 彼女は骨董市などで描くモチーフを選びますが、そこでは純粋にそれが美的に優れたものかということだけを考え、特に、白いビーズのポーチには20世紀美術の粋が見て取れるといいます。フラットな背景に緊張感をもって配置される、幾何学的な文様のビーズのポーチやネックレスは、ソル・ルウィットやアグネス・マーティンの連続性を想い起させます。ポーチの規則的な模様を整然と画面に配置することで、ジットマンはモダニスト特有の絵画の平面性を示唆し、また絵の表面とフォルム、平面性と描かれているもの、視覚性と質感などを探求しています。 作家は、まるでビーズ刺繍の行程を画面上で反復するかのように、ビーズ一粒一粒を描きますが、絵を描くのは朝から陽光があるうちに限られ、モチーフを描き終えたとき全体を包むやわらかい光は、モチーフが置かれている環境―光や風、湿度といった自然―をも感じさせます。 「On Display」のシリーズに併行して、ヴィクトリア・ジットマンはルネサンス絵画のポストカードなどを元に女性のポートレートを描くシリーズ「The Beauties」を続けています。この小さな作品のシリーズでは、編み込みの髪や、パールの首飾り、金襴の袖といった、オリジナルの作品でも執拗に描かれていた細部が、さらに緻密に、執拗に小さな画面に描かれることで、オリジナルに潜んでいたフェティシズムが露になります。作家の興味を誘ったのは、この上なく飾り立てた女性が、まるで陳列(On Display)されるように額縁におさまる、という構造そのものです。ポーチとネックレスを描いた「On Display」のシリーズと同様、繊細なディテールがそれを目の前にした鑑賞者を惹き付けます。そうして生まれる絵画と鑑賞者との間の豊かな関係性が、彼女の作品の核となっています。 本展覧会では、「On Display」のシリーズから、ペインティングとドローイングを展示いたします。光をまとい、静謐な空気を醸す、ヴィクトリア・ジットマンの写実を、ぜひご覧下さい。 ヴィクトリア・ジットマンは1972年アルゼンチン、ブエノスアイレスに生まれ、10代でアメリカに移住し、現在はマイアミに拠点を置いて制作しています。1996年フロリダ国際大学を美術学と人文学で卒業。美術館での個展に、「Looking Closely: Paintings and Drawings」(2008年、ラスベガス美術館)、「On Display」(2005年、バス美術館、マイアミ)があるほか、ニューヨークのDavid Nolan Gallery、ロサンゼルスのDaniel Weinberg Galleryなど、アメリカを中心として個展を多数開催しています。作品はニューヨーク近代美術館、ロサンゼルスカウンティミュージアム、ホイットニー美術館などに収蔵されています。 [作家コメント] オープニングレセプション:3月19日(水)18:00~20:00 全文提供:8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery 会期:2014年3月19日(水)~2014年4月14日(月) 時間:11:00 - 20:00 会場:8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery |
最終更新 2014年 3月 19日 |