展覧会
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執筆: カロンズネット編集3
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公開日: 2013年 10月 15日 |
中西信洋は、知覚の視点を曖昧化し、時間と空間と身体の関係性においてものごとを認識しようとする行為を主題として、物質と非物質の関わりを彫刻化している作家です。
中西は、制作の過程で、撮影現場の気温や湿度、空気の澄み具合を肌に感じること、物に触れて質感を確認すること、周囲を歩くことで大きさを知ること、といった直接的な体験が、作品にイメージの変化とリアリティを与えると考えています。 そして、鑑賞者が作品に向かい合った時、作家が作品に触れる行為と作品によって鑑賞者側に引き起こされる運動が、お互いの身体の深奥部で交差することを望んでいます。
東京では初の個展となる本展では、《Layer Drawing》および《Stripe Drawing》のシリーズから、新作を中心に紹介いたします。 ぜひ、ご高覧下さい。
[作家コメント] 私にとってのものを見ることとは 中西信洋 私は対象を観察して物体に置き換える塑像や描写という行為により得た経験から『ものを見るということ』について自覚したことが多くある。その体験の中で感じられたことに、「部分と全体」「ネガとポジの意識」「時間と記憶の集積」「視覚の触覚性」「身体の置き換え」などがあげられる。 私にとっての作品とはものを思考、認識する過程であり、世界の捉え方そのものであると言える。 中でも『身体の置き換え』は私にとってものを捉えるということの中心にある。例えばミケランジェロの彫刻を見る時、奴隷のポーズ、表面を覆う骨と筋肉の流れは私たちに同じポーズをしたときの肉体の痛み、拘束感を思いおこさせる。それは単なる肉体の痛みだけでなく奴隷の精神の痛みであり、また作者の感情のあらわれであるとも言える。私たちの視線と肉体は奴隷の肉体と精神に置き換わる事も出来れば、刻まれたのみ痕を通じてのみをふるう作者の力と感情に置き換わることもできる。人間がものを見るという行為は身体の置き場所を探る行為であるとも言える。 また、人体が彫られたり、描かれたりしたような具象的なものに留まらず、空間自体にも身体の置き換えや拡張が見られる。例えば、霧の出る寒い朝の風景などはものの輪郭、遠近、水平、大きさを曖昧にし、空間いっぱいに充満する水蒸気は遠くの山並みから網膜の表面にまで地続きに満ちていて、冷たい空気は皮膚の毛穴を刺激し、目や鼻や口の奥に入り込み、体の内部を感じさせ、身体の外と内との境界を曖昧にさせる。 このような風景の中では自分の身体は溶け出して水蒸気の間にかすかに見えるもののように断片化され、空間そのものに溶け出してしまったかのように感られる。このときの身体は具体的な対象に置き換わるのではなく漠然とした空間に溶け出した器官の様な存在として置き換わる。 このように視覚や皮膚感覚の経験を通じてあらゆるものに触れることの出来る人間の視線は細部を意識しながら同時に全体を眺め、取り巻く空間との関係の中でものの存在を意識する。視線を移動させながら常に見る事の出来ない向こう側を感じ、見えているものと見えていないものを同時に埋めていく行為を繰り返している。 これはただものを見ているというよりは神経と記憶と触覚を駆使し、全身で空間を捉えようとする行為である。
[作家プロフィール] ■中西信洋(なかにし のぶひろ) [主な個展] 2013 「Layered landscape」JOYCE GALLERY BEIJING(北京) 2012 「Breath of light」 GALERIE KASHYA HILDEBRAND(チューリッヒ、スイス) 2011 「透過する風景 -Transparent view-」国際芸術センター青森(青森) 2010 「Interference」ギャラリーノマル(大阪) 2006 「Saturation」大阪府立現代美術センター(大阪) 2005 「満ち溢れているものへ」INAX GALLERY 2(東京) [主なグループ展] 2013 「北九州を巡るアート展 Vol.5」北九州市立美術館本館市民ギャラリー(アネックス)(福岡) 2012 「みえるもの/みえないもの」豊田市美術館(愛知) 2011 「見えない都市 ― 地名の解剖学」Operation table(福岡) 2010 「知覚の扉 Ⅰ」豊田市立美術館(愛知) 2009 「田中恒子コレクション展 自宅から美術館へ」和歌山県立近代美術館 2009 「コレクション/コネクション −福岡市美術館の 30 年, Layer Movies」福岡市美術館 2 階ロビー(福岡) 2009 「武蔵野美術大学 80 周年記念展『変成態−リアルな現代の物質性』vol.2. 冨井大裕×中西信洋『揺れ動く物性』」 ギャラリーα M(東京) 2007 「アートイニシアティヴ・プロジェクト, vol.1『Exhibition as media(メディアとしての展覧会)』」神戸アートビレッジセンター(兵庫) 2007 「六本木クロッシング 2007:未来への脈動」森美術館(東京) [パブリック・コレクション] 森美術館(東京)、和歌山県立近代美術館、豊田市美術館(愛知)
■オープニングレセプション 2013年11月22日(金)
全文提供:ユミコ チバ アソシエイツ VIEWING ROOM-shinjuku
会期:2013年11月22日(金)~2013年12月21日(土) 時間:12:00ー19:00 休日:日・月曜、祝日 会場:ユミコ チバ アソシエイツ VIEWING ROOM-shinjuku
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最終更新 2013年 11月 22日 |