レイヤーズ:韓国の新進気鋭作家 |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2009年 7月 08日 |
近年、単なる“記録の手段”ではなく“創作の手法”のひとつとして急速に発展し続ける写真や映像作品。その中でも本展では、手法やコンセプトを幾重にも折り重ね、作品内にレイヤー(層)を生み出すことで表現の新たなる可能性を探る作品を展示致します。 キム・シヨンは、石けんや塩など壊れやすい素材を用いたインスタレーションを表現の手段としながら、第三者によってそれらが撮影された写真を作品として発表します。洗濯物が干されるベランダ、料理道具の揃ったキッチンなど、日常風景の中に並べられたインスタレーションは、日々積み重なる彼女の不安や鬱屈にも、それらから彼女自身を守るために張られた防壁にも見えます。また第三者による写真という手法の二重構造は、作品に潜むレイヤーを象徴的に示唆します。 意図的に不鮮明に写し出し、表面に汚れや傷をつけることで、まるで絵画のように仕上げられるクォン・ドゥヒョンの写真。制作年によって異なる素材を用いたり、表面にサインを入れるなどの加工を施す彼の手法は、写真の“エディション”の概念を超え作品一点一点にオリジナリティを与えるとともに、“写真とは何か”という定義を問い直しその無限の可能性を探ります。 シン・ギウンの映像作品の中では、スーパーマンのフィギュアやチェスの駒、目覚まし時計や各国の硬貨など見知ったものが音楽とともにテンポよく削られていきます。物が溢れ、情報が氾濫する現代を象徴するようなものが次々と粉々にされて行く様子は、不要な堆積物を徐々に取り去ることで私たちは本来の姿を取り戻すことができる、ということを暗示しているかのようです。 日常の風景を非日常的な目線で写し出すチェ・スンフン+パク・ソンミンの作品は、見過ごしがちな日々のワンシーンの美しさに改めて気づかせてくれます。さらに1枚の写真としてだけではなく雑誌へと媒体を変化させることで、そこに新たな物語が生まれます。“写真”“インスタレーション”など既存のカテゴリーには収まらない、多角的な作品展開で私たちを魅了します。 「様々な観点による相対的な知覚や認識が作品に無限の可能性と可変性を与える」ーかつてキュビズムの概念が提示したように、私たちの個人的な知識や経験、感情もまた作品の一部となり、新たな表情や意味が生み出されます。釜山ビエンナーレを始めとする、韓国の主要美術館、ビエンナーレのキュレーターを歴任してきたキム・インソンをゲスト・キュレーターに迎え、韓国現代アートの新星5人による気鋭の作品を発表し、この夏日本に韓国の新しい風を吹き入れます。 ※全文提供: フォイル・ギャラリー 会期: 2009年7月17日-2009年8月8日 |
最終更新 2009年 7月 17日 |