伊東敏光 展 |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2013年 4月 08日 |
風景画の傑作は数え切れないほどあるのに、風景を題材とした優れた彫刻はなぜ見当たらないのか――。そんな問題意識を出発点に、彫刻家の伊東敏光は近年、「風景彫刻」の制作に挑んでいます。フレームがない、遠近法が使えない。風景彫刻の制作はそうした彫刻の制約を解決する試みともいえます。 風景とは見る人の解釈によって目の前の空間を切り取ったものですが、そもそも彫刻には絵画や写真のフレームに相当するものがなく、空間を切り取るのに向いていません。しかし海と陸の境がある島であれば一点の彫刻で表現しやすいため、伊東は2011年に「宮島鼠」(木、135×295×110センチ)を制作しました。このときは広島県の宮島がネズミのように見えたのがヒントになり、「ある時点で連想した別の形を全体像として与え、印象深い要素を盛り込む」という方法をとりました。 この方法を応用したのが、今回の個展に出品する「AA60」(写真、2012年、木、石、406×412×160センチ)です。この作品は昨年、米テキサスでの滞在制作をきっかけに生まれました。フレーム代わりの全体像は、アメリカン航空の成田-ダラス間に就航している飛行機。そこに、米国内での移動時に飛行機の窓から見たアリゾナの砂漠やサボテンを含めた風景を抽象風に表しています。 「彫刻は実在物(人や動物)を実在物(木、石、鉄など)に移すことから逃れられないため、方法論を生み出さず技術に頼ってきた」というのが伊東の見方です。言い換えると、新しい方法をつくることができれば、彫刻で風景を表現できる可能性があるわけです。その完成の暁には、「絵のように美しい風景」ならぬ「彫刻のように美しい風景」という言葉が生まれているかもしれません。 (月~金曜正午~午後7時、土曜正午~午後5時) [作家プロフィール] 全文提供:橘画廊 会期:2013年4月1日(月)~2013年4月20日(土) |
最終更新 2013年 4月 01日 |