山本晶:Cut |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2012年 4月 20日 |
2002年と06年のVOCA展、2008年のDomani展での展示でも知られる平面作家。文化庁の在外研究員としてアメリカから帰国した2006年以降はそれまでの油彩だけでなく、持ち帰ったフェルトを使って立体作品を試みるなど、常に新規な表現に取り組んでいます。 山本は日常の中で見た風景や雑誌のイメージ、窓を通して見える光や影、様々なものの形を切り取り、それらの重なりあいを画面上に再構成することで作品を制作しています。ある時には抽象的に、またある時はくっきり形が見えてきたり、交差する形や色の揺らぎがその作品世界の魅力です。 山本の作品において光と形、色が重要な要素です。私たちの網膜は物に当たった光を像として捉え、形や色を認識します。その一方、窓の形はこうであるとか、見る前からそのものを「知っている」ことで出来上がった認識の中での既成のイメージがあります。 しかし実際にものを体験として見る際には焦点のあっていない像は霞んでおり、見る角度によって実際の物の姿は大きく変化しています。また、物には固有色はなく、光の当たり具合で色は様々に変化して見えます。物を思い出そうとするとき、実際に見えている像と記憶の中の像を重ねて見ることも可能です。山本の画ではこうした視覚、知覚の曖昧さ、あるいは柔軟さを平面に再構成する作業に近いのかもしれません。 2010年の春以来2年ぶりとなる今回のアートフロントギャラリーの展覧会では山本の最も得意とする油彩を中心に、山本の構築のプロセスがより即興的な表現として見えるドローイング作品も展示します。特に今回の展覧会では固有の名前のないものの影の形を意識的に選び、見る人の想像力に委ねる作品を展示します。 特に確固たるジャンルとして確立された絵画の世界において、鑑賞でなく空想や遊びの要素が作品を作る側からも見る側からも欠如していってしまっていると感じることが多いのが残念なのですが、山本の作品にはそのような失われた絵画の楽しさを味わう原点のようなものが本来つまっているのではないでしょうか。 アートフロントギャラリー 近藤俊郎 [作家プロフィール] オープニングレセプション:4月13日(金) 18:00~20:00 全文提供:アートフロントギャラリー 会期:2012年4月13日(土)~2012年4月29日(日) |
最終更新 2012年 4月 13日 |