春草絵未:空気のしっぽ |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2011年 9月 11日 |
Ohshima Fine Artでは二回目となる春草絵未の個展である。春草の創作には、彼女自身の身の回りにある「もの」や「出来事」が登場する。ごく普通の日常の積み重ねが、大切な宝石の如く作品に結実している。画面上に無作為的に並べられた「ものごと」も この世の中のあらゆるものに無意味なものが無いことのように、表現者にとっては、実は必然なのである。それらの日々の集合体が、春草絵未の創作の糧であり、また同時に本人自身の‘物語’である。 さて、タイトルの『空気のしっぽ』である。地球上に当たり前に存在しているのだが普段は意識しない空気。でも絶対に無くてはならないもの というフレーズは最も有名であろう。人と人との間には、見えないけど唯一無二な「空気」のような存在があり、そのやわらかに包んでくれている見えない“なにか”によって我々は生きていける、そして繋がっている。そして、その肝心な空気に、しっぽ があったら・・・と、想像するだけで楽しい。それを探してもいい。『空気のしっぽ』とは見えない中に隠れているものを探し出すという意味を込めた言葉である。この個展では、大小の作品群とギャラリー空間のインスタレーションで作り上げる。 今回春草は『絵本』も制作した。以前から試してみたかったことだという。また、短歌集も出している。31文字の言葉を組み合わせて出来る世界と、モチーフの構成で成り立つ画面作りは繋がりがあるようだ。元々文学や「言葉」への嗜好性もあり、絵画と言葉の世界を自由に行き来している。つまり、春草絵未の本来のクリエイションの広がりを実感できる場となった。 ひそやかに息づいている世界に対するアーティストの眼差しが感じられる展覧会である。 ※恩田陸さんの文庫本の装丁画を描きました。その原画と共に本も販売致します。 全文提供: Ohshima Fine Art 会期: 2011年9月10日(土)~2011年10月1日(土) |
最終更新 2011年 9月 10日 |