都市抽象 -上海現代抽象絵画展- |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2011年 8月 14日 |
中国の現代美術は、実質的には文化大革命後に始まったといわれています。アーティストたちは、文革後の開放と天安門事件による理想の挫折、さらに経済の急成長を経験しながら、激動の現代史を生き、極めて短期間の中に独自の表現を切り開いてきました。そして、いまや、中国の現代美術は、世界でもっとも熱い注目を浴びている存在となっています。しかし、このような中国現代美術への世界の目は、1990年代に盛んになった「ポリティカル・ポップ」や「シニカル・リアリズム」などの二大潮流や、漫画やアニメなどに影響された新世代のアートなど、ポップ様式を借りて表現される具象的な美術、いわゆる「チャイニーズ・ポップ」といわれるジャンルに限定されてきたように思います。 ところが、実際の現代中国の美術シーンには、こうした「チャイニーズ・ポップ」ばかりでなく、モダンな水墨画から先端的な映像系まで、実にさまざまなアートが共存・隆盛しています。とくに上海は、1990年代以降、絵画の分野で、丁 乙(ディン・イー)や李磊(リ・レイ)、薛松(シェ・ソン)をはじめとする一連の優れた抽象作家を数多く輩出しています。 今回の展覧会は、わが国ではそれほど知られていない上海の抽象絵画に焦点を当て、世界的に活躍する9人の作家の油彩と版画の作品を紹介するものです。 2010年の万博開催後もさらに開発の波が続き、中国の躍進の象徴的な都市としてみなされている上海。その都市の成長とともに生きてきたこれらの作家は、一方で青年期に天安門事件を経験している世代です。表現はそれぞれ個性豊かですが、いずれも若い頃からのさまざまな体験と深い思索に裏打ちされた奥行きと、巨大都市のエネルギーを洗練されたスタイルに昇華する優れた技術を感じます。 この機会に、彼らの作品を通して、躍進する中国現代アートのもうひとつの側面を知っていただき、その多様性と可能性を予見していただけたらと思います。 全文提供: アートフロントギャラリー 会期: 2011年8月16日(火)-2011年8月31日(水) |
最終更新 2011年 8月 16日 |