不安定な視界 |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2011年 2月 11日 |
林田健 美術とは、日常の物の見た目と我々の視覚へ対する疑いをもたらすものではないでしょうか?静止した二次元の絵画へ向かっていたとしても、我々は自分の知覚に疑問を抱くことがあります。つまり、変動する輪郭を持つ形象、永久に移動する境界線を持つ空間、消え入りそうな、不明確な形の跳躍、具象と抽象の間のリバーシブルな動きを見せる絵画は存在するでしょう。 2011年3月30日Frantic Galleryは小川晴輝、林田健と、田附楠人による「不安定な視界」を発表します。日本の若い画家の三人は、定まった特徴に反抗しつつ、絶え間なく変化する空間、色と形を再生する視覚についての最近の研究を展示します。 小川晴輝(1985年神奈川県生まれ)は「三次元の抽象」の特徴を探求し続けます。彼の絵画において、非形象的な要素はボリュームを得て、具象の性格を受け取りながら、フレームから脱しようと試みます。絵画のダイナミズムと、画面上の要素における多数の関係性を表しながら、彼の最近の作品は強烈な色面の絡み合わせるという特徴を持っています。このように、作家は平面と空間、面とボリューム、二次元と三次元の視覚の両方を表現しようと試みています。「集積のリズム」という題名の最近の作品二点は、多中心の振動と安易に変容する繋がりの視覚に固執します。 林田健(1979年長野県生まれ)は、トイレの床の水に美的なインスピレーションを得、「残光」の絵画シリーズを続けます。濡れ、つやつやとした床のとらえ所のない光景、丸いタイルの反復したパターンと窓から注がれる日没の光の反射は、作家のトイレの印象を絵画に高めさせました。林田は床をスクリーンのように構成し、このスクリーン上でのぼんやりとした空気の中で、背景からにじみ出すような、方向性とラインを移行させながら、タイルの間に形を流し込みます。冒頭で重要でないモチーフにおいても、林田の「フロアペインティング」は日本の伝統的な風景絵画にヒント得ています。すなわち、霧に霞んだものの間の不明瞭な距離、湿気と重く、圧倒的な空気の触覚感、「悪化」による時間の後は、なにも定まらず、安易に把握させず、予測できないイメージを生み出します。 田附楠人(1982年大阪生まれ)は自己に前例のない絵画技法を研究し続けます。以前と同様に、彼はアクリルのパネルを彫り、その空洞に鮮やかな色のペイントを掛け、作品の裏を見せつつ展示します。この時、田附は、絵画における「表」/「裏」、「ポジ」/「ネガ」を転覆し、「彫る」と「描く」、「彫刻」と「絵画」の間の境界線を取り払います。今回、作家は彫った面に鏡の皮膜を付け、観客の視点と絵画の表/裏の関連をさらに複雑にさせます。田附の作品は入り込んだトポロジー、絵の具の強烈な色と彫られた複合のパターンによって不明瞭な奥行きと不定なリミットをもつ視野をつくりだします。 「不安定な視界」展に参加する作家は、Frantic Galleryにより去年パリで開催されたCutlog アートフェアで日本現代抽象絵画をテーマにした展覧会において発表されました。この展覧会の成功とオーディエンスの活発な反応があったため同じ三人の作家を同じグループで、今回は東京において発表し、彼らの美術の共通点により深く考えることと致しました。小川、林田、田附の「不安定な視界」は、日本の現代非形象的な絵画の強さを証明し、今後の新たな10年において、可能な発展方向に注目させるものになると期待します。 キュレーター: ENTOMORODIA curatorial net/work ※全文提供: Frantic Gallery 会期: 2011年3月30日(水)-2011年4月3日(日) |
最終更新 2011年 3月 30日 |