アキバタマビ21第75回展覧会「フィジーク トス」 |
展覧会
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執筆: 記事中参照
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公開日: 2019年 2月 23日 |
【テーマ/アーティストステイトメント】 「フィジークの選手はサーフパンツを履く」この一文は、「柔道の選手は道着を着なければならない」というような競技におけるルールを指し示しているだけではない。スポーツの大会において多くの場合、着用する衣類には規定が存在している。そのほとんどが、選手たち自身の能力を純粋に見極めるために、その外的な要因となる部分をできる限り均質化しようとするものであろう。フィジーク選手のサーフパンツはそうした規定であると同時に、競技の審査に大きく作用するものでもある。それはユニフォームの着心地やシューズの履き心地がプレイに影響するということではない。サーフパンツそのもののデザインや着こなしがいかにナイスであるかということである。 トスは基本的に“上げる”ものである。コイントスというと硬貨を跳ね上げ、落ちた際の裏表を観測する。そして、コインがある地表面に到達しない限り裏表を見極めることができないように、ボールもまた「トス」された時点では得点でも失点でもないがスパイカーが打ちやすいトスを上げることができる。 (ナイストスはプレイに影響する。) バレーボールにおける「トス」は味方の攻撃を目的としてアタッカーに対して送られたボールことをいう。トスは基本的に“上げる”ものである。この世界において、上げられたものは、やがて下に落ちていく。バレーボールというシステムのなかではどのようにボールが落ちる過程が考えられるだろうか。ただ無抵抗に重力に従って落ちるもの、アタッカーの手により相手コートに向けて加速して落ちていくものもあるだろう。試合でラリーが続くというのはボールが落ちない状態のことを示しているが、けして落ちていないわけではない。何度も落ちては上げられているのだ。「トス」をアタッカーと結びつけた「送球」ではなく、全体のシステムを運用するための「ファンクション」だと考える。そうすると、初期値をあたえて状況を観察する行為としての「トス」がみえてくる。 制作のなか、あるいはその環境下や作品の鑑賞体験において、どうしようもなくある規定や約束事について。それはフォーマットと言ってみてもいいかもしれない。そんなフォーマットに対して「のる」でも「おりる」でもなく「つかってみる」ということ。小林椋は、ビデオカメラと映像を映すディスプレイ、捉えられる対象物を動的な関係に置き、人が映像という“動くイメージ”を見るときの慣習を用いながら異なる次元を交差させる。時里充が用いる計測器は世界の法則に対して実直である。ゆえに時里の映像は、人の“見る”という認知活動の欠損や揺らぎを表出させる。本山ゆかりは、絵画における“絵を描く”という行為そのものを分節化し、新たにシステムを構築し直すことによって、純粋に“線を描く”という行為に向かう。ucnvのグリッチが表すのは、人にとって読み取るべき図像ではなく、むしろその条理から外れた、コンピュータ世界の法則や構造そのものである。 【出品者 略歴】 ○ucnv プログラマー・アーティスト。コンピュータ上で画像や映像を破損させるプログラムを開発、それらを用いて作品を制作する。主な展覧会に「New Vulnerability」(Cultivate/2012)、「Open Space 2013」(ICC/2013)、「Vacant Room」(SOBO/2015)、「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」(21_21 DESIGN SIGHT/2018)、「二個の者が same space ヲ occupy スル」(コ本や/2018)など。 https://ucnv.org/ ○本山ゆかり Yukari MOTOYAMA 1992年愛知県生まれ。2017年京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻油画修了。絵を構成する要素を分解しながら、絵をつくる/鑑賞するときに起きるひとつひとつの出来事を見つめる作業をしている。主な展覧会に「東京・占い・ジャーニー」(VOLVO青山/2018)、「paint( )ings 」(Yutaka Kikutake Gallery/2018)、「この現実のむこうに Here and beyond」(国際芸術センター青森/2017)、「裏声で歌へ」(小山市立車屋美術館/2017)がある。 ○小林椋 Muku KOBAYASHI 1992年生まれ。2017年多摩美術大学大学院美術研究科修士課程情報デザイン領域修了。現在は京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻に在籍。キネティックな動きによってささやかな音を発する音響装置から、近年ではヴィデオカメラやディスプレイといった映像機材などと組み合わせたインスタレーションを制作している。主な展覧会に「プールの輪にワニ」(ギャラリーN/2018)、「ローのためのパス」(ギャラリー16/2018)、「エマージェンシーズ!032『盛るとのるソー』」(ICC/2017)、「無・ねじらない」(コ本や/2017)など。 ○時里充 Mitsuru TOKISATO 2010年岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー、2012年多摩美術大学卒業。画面やカメラに関する実験と観察を行い、認知や計量化といったデジタル性に関する作品を制作発表。展覧会に「エマージェンシーズ!022『視点ユニット』」(ICC/2014)、「見た目カウント」(SOBO/2016)、「フィットネス. 」(アキバタマビ21/2016)、「アスリート展」(21_21 DESIGN SIGHT/2017)、「見た目カウント トレーニング#2」(gallery to plus/2017)、「めくる映像_特集」(コ本や/2018)、「ラビットリーディング」(TABULAE/2018)など。 https://tokisato.info/ 【展覧会詳細】 「フィジーク トス」 “ Physique Toss” 2019年3月6日(水)~3月31日(日) 開場時間 12:00~19:00(金・土および3月6日[水]・7日[木]は20:00まで)、火曜休場 【イベント】 ○オープニングレセプション 3月6日(水)17:00~20:00 ○トークイベント 3月16日(土)16:00~19:00 ゲスト:細田成嗣氏(ライター/音楽批評) 1989年生まれ。ライター/音楽批評。佐々木敦が主宰する批評家養成ギブス修了後、2013年より執筆活動を開始。『ele-king』『JazzTokyo』『Jazz The New Chapter』『ユリイカ』などに寄稿。主な論考に「即興音楽の新しい波──触れてみるための、あるいは考えはじめるためのディスク・ガイド」、「来たるべき「非在の音」に向けて──特殊音楽考、アジアン・ミーティング・フェスティバルでの体験から」など。 *関連イベントは決まり次第アキバタマビ21ウェブサイトにてお知らせいたします。 【展覧会場】 アキバタマビ21 〒101-0021 東京都千代田区外神田6-11-14 3331 Arts Chiyoda 201・202 電話:03-5812-4558 URL: http://www.akibatamabi21.com アクセス: 東京メトロ銀座線末広町駅4番出口より徒歩1分 東京メトロ千代田線湯島駅6番出口より徒歩3分 都営大江戸線上野御徒町駅A1番出口より徒歩6分 JR御徒町駅南口より徒歩7分 JR秋葉原駅電気街口より徒歩8分 ※「アキバタマビ21」は多摩美術大学が運営する、若い芸術家たちのための作品発表の場である。ここは若い芸術家たちが、互いに切磋琢磨しながら協働し共生することを体験する場であり、他者と触れ合うことで自我の殻から脱皮し、既存のシステムや権威に依存することなく自らをプロデュースし自立していくための、鍛錬の場でもある――そうありたいという希望を託して若い芸術家たちにゆだねる、あり得るかもしれない「可能性」の場であり、その可能性を目撃していただく場所である。
http://www.akibatamabi21.com
全文提供:アキバタマビ21
会期:2019年3月6日(水) 〜 2019年3月31日(日) 時間:12:00~19:00(金・土および3月6日[水]・7日[木]は20:00 まで) 休日:毎週火曜日 会場:アキバタマビ21
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最終更新 2019年 3月 06日 |