エルネスト・カイヴァーノ:彼女が枝にあたえる影響(関係のトポグラフィー) |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2009年 9月 08日 |
エルネスト・カイヴァーノが描く精緻な細密画には、美しい鳥や花々、樹木や人物などの具象的なフォルムと、抽象的な矩形、多面体、ちりばめられた断片的な線などが、しばしば奇妙に混ざり合いながら表れます。「民間伝承とおとぎ話、そして科学的な思索が神がかり的に融合し、カイヴァーノの物語は、潤沢な情報の中で意味が見失われていくことへの追求としての役割を果たしている」(Joao Ribas;Wisdom Lost in Knowledge,Ernesto Caivano,published by White Cube, 2008)という示唆のように、カイヴァーノは古典的なアナロジーの手法を取り入れながら、私たちがお話を読み解く想像力と、世界の構造を科学的に解析するための幾何学的理論とを、巧みに重ね合わせているかのようです。彼がPhilaporeと名付けている架空の鳥は、絵の中で切り株や花びらと一体化してしまい、その羽根の模様は抽象的な色面のパターンとなって、画面に独立したリズムを作り出します。 本展では、20点余りのドローイングを展示予定です。インクと木炭による細密画に加え、水彩やマーカーを加えたカラーのドローイング、またコラージュによる色面だけで構成されたものもあります。『彼女が枝に与える影響』と題されたドローイングでは、荒涼とした風景の中にのびた枝の一筋に、小さなお姫様が蓑虫のように捕まっています。その様子はもはや人の形というより、木のこぶになってしまったようでもあります。一方、『関係のトポグラフィー』では、不揃いな凹凸の上から細かな網をかぶせたかのような抽象的パターンが、画面全体に靄のように広がっています。カイヴァーノが描くトポグラフィー(地形学)は、彼だけが知っている秘密の法則性を持った地図なのです。 作家プロフィール 全文提供: 小山登美夫ギャラリー |
最終更新 2009年 9月 05日 |