加藤大介:今は見える |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2011年 11月 09日 |
加藤大介の作品は、動物の仮面を被った等身大の少年少女たちです。精緻にリアルにつくられ、青地に白い水玉シャツに半ズボン、白いワンピースに黒い靴を纏った姿は、まるで実際の人物がそこにいるような存在感がありますが、どこか儚く、やはり実態ではないような不思議な光景をつくり出しています。 加藤は乾漆技法で作品を制作しています。乾漆技法とは漆で麻布を固めて造形する技法で、古来より阿修羅像をはじめ多くの仏像に用いられてきました。中が空洞になった構造は、加藤のつくりだす濃密でリアルな人物像に、物質の重量感を欠落させた軽みを与え、それがそのまま現実世界からの浮遊感に結びついています。 少年少女たちが被る仮面は、鳥や動物、虫や植物など生きものをモチーフにしています。シンプルで清潔な色味の洋服で、そっと佇む華奢な身体とは不釣合いな大きさの獣の仮面は木彫で、ごつごつとした質感や黒ずんだ色が一種異様な怖さを感じさせます。 覆われた顔は、眼球など細部に至るまでつくり込まれていますが、面を外して見ることはできません。なぜ仮面を被っているのか、被らされているのか、仮面そのものが本来の顔なのか、それぞれの答えは閉ざされたまま、静かな気配がただ漂っています。 加藤大介は、東京藝術大学大学院で彫刻を学んだ後、漆の技術を学ぶため、現在更に大学院の工芸科に在学中です。もともとアメリカンコミックのフィギュアが好きで彫刻を選び、在学中には伎楽面や仏像、欧州の教会の宗教彫刻などを見て、周囲の雰囲気をも含めたストーリー性を持つ彫刻作品に魅力を感じたといいます。 仮面への興味と物語性が結びつき、大学院の彫刻科で乾漆技法と出会い、現在の作品が生まれました。 今展では、新作8点を展示します。どうぞ会場でご覧ください。 加藤大介 ※全文提供: INAXギャラリー 会期: 2011年10月27日(木)~2011年11月28日(月) |
最終更新 2011年 10月 27日 |