中山明日香:empirical garden |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2011年 2月 11日 |
中山明日香の作品は、室内と自然をモチーフに、ひとつの画面にイメージを幾重にも重ねた真昼のように明るい色調が印象的な油絵です。 「edible garden」では、明るいピンク、グリーン、ブルーの色彩が踊る庭に、落ち葉の上で焼かれるクリスマス・チキン、壁紙模様の塀や地面に置かれたテーブルウエアといった室内の風景が重ねられています。反転する色遣いやぺたりと平面的なマチエールが、だまし絵的な非現実感を強調し、日差しは明るいのにどこか怖い物語を見るものに想像させます。 中山の実家の庭をもとに描かれたこの作品には、父のつくったベンチやブランコ、落ち葉焚き、死んだペットを埋葬した同じ庭でバーベキューパーティをするという体験も含めて、動物をペットと食糧に分ける人間の基準を一方的だと感じた思い出も込められています。 祖母の死をきっかけに、人工的につくられる電照菊とお葬式のイメージを重ねた「ceremony for flower」や、家の中にいるように快適なアウトドア用品の矛盾から生まれた「Living with nature」など、いずれも作家自身が実際に体験した日常の不条理、違和感、不可思議が、明朗で清々しい色彩のうちに焙り出されるように表現された作品です。 中山明日香は、現在、京都市立芸術大学の修士課程1年目で、油絵は大学に入ってから描き始めました。当初より空間や奥行きの表現が苦手だったと話しますが、それが逆に、部屋という空間を油絵の具でシールのように平面的に描いて、違和感を描き出すという手法に活かされました。 今展では、2×4メートル大の新作など、壁に画面がいっぱいに広がる大きさの作品を、みるものがそのまま画面の中へ、奥の部屋に入っていくような雰囲気になるよう展示します。モチーフには、昨夏訪れたモロッコの市場の猥雑な生々しさ、食と動物のあやふやな関係にインスパイアされたテーマの新作4点を発表する予定です。 真昼のように明るい夜、無人のうちに宿る人の気配など、若い作家のみずみずしい等身大の今の感覚をぜひ会場でご覧ください。今展が東京では初個展となります。 中山明日香 展覧会歴 ※全文提供: INAXギャラリー 会期: 2011年3月1日(火)-2011年3月29日(火) |
最終更新 2011年 3月 01日 |