阿部大介:モノ・コトの貌 |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2009年 9月 12日 |
展開図のように開いている自動車タイヤ、生地が爛れている革のジャンパー、座面が泡沫状に溶解しているスツールなど、阿部大介の作品は本来ある物の質感を変容させ、そのイメージが揺らぐ瞬間を表現しています。立体作品では、「発泡バインダー」というTシャツなどに立体的なグラフィックスをつける素材を利用して非現実的で不気味な表情をつくり出します。見慣れた物の変容する姿は衝撃的で、事故や爆発、化学反応といった瞬間を連想させたり、機能として形態を変形させる特質をもったもの(蛹やロボット)の転生していく姿を想像させます。揺らぐイメージには、多くの事象を内包した豊かで強い力があります。 平面作品では、タイヤ、灯油ポリタンクなどの一部分が紙上に不思議な痕跡を残しています。その制作方法は予め、物の表面の凹凸に油性インクを詰めた後、木工用ボンドで表面を覆い、ボンド乾燥後、剥がしとったものを水槽の中に浮かべ、沈めた紙ですくい上げて定着するというものです。版画や標本のように見える作品は、実際の物のかたちを留めながらどこか不安定なイメージですが、二次元になって立体感を失うことで逆に、強い存在感を主張する作品です。阿部大介は、美大版画科に学んだ30代の作家です。平面作品だけでなく、2007年頃から現在のような立体作品もつくり始めました。これまで愛知県を中心に発表をして、受賞もしてきた実力派ですが、今展が初めての東京開催となります。緻密でリアルにつくられた立体や平面作品を併せて展示致します。 作家略歴 全文提供: INAXギャラリー |
最終更新 2009年 8月 26日 |