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Published: March 13 2013 |
the three konohanaのオープニングは、関西を拠点に精力的に活動を続けている絵画作家、伊吹拓(IBUKI Taku, b.1977)の個展を開催いたします。 近 年の抽象絵画の動向には、従来の美術史の文脈の継承よりも、現代社会や日常の生活にある具体的な要素を取り入れて、再構成するものが目立っているように思 えます。二次元上の造形という観点から、デジタルの概念が市民権を得たことによるレイヤー的な表現。個々人の精神の不安定さの蔓延が着想となっている超感 覚的とされる表現。積極的な思考の放棄による単純な行為の反復・蓄積といったものが挙げられます。これらの背景には、従来まで絵画のアイデンティティで あったはずの二次元としての画面や造形の概念が、副次的なものとして扱われるようになったことも要因としてあります。モダニズムが終焉して以降、あらため て絵画そのものの概念の行き詰まりを感じさせるとともに、それを再追究する余地はまだ残っていないだろうかという思いに駆られます。 伊 吹は、自らの存在と内面の世界を深く洞察し、それらを発露させるための抽象絵画に、学生時代から一貫して取り組んでいます。なかでも、彼の特徴的な表現手 法とされているものが、絵具による「積層」を通じて随所に発生する「垂れ」や「滲み」です。彼にとって筆や刷毛によるストロークと等価とするこれらの手法 には、彼らしい感覚が横たわっています。それは「委ねる」ことです。 そ こには、アメリカ抽象表現主義以来常に語られてきた、偶然性や自然的なものによる平面絵画内への関与を見ることができます。彼はこの他力としての要素を作 品に積極的に取り入れ、更には自己にも接触させることによる流動的な変化を強く意識しています。また、近年彼が取り組んでいる屋外での展示でも、日々の時 間や天気における光の変化によって、常に同じ視覚認識で作品を鑑賞できない過酷な環境に作品を置きながら、伊吹は絵画そのものへ客観的なまなざしを投げ続 けてきました。 当 展は、これまでの伊吹の一貫した制作意識から次の段階を強く示唆させる、新作のタブローのみで構成いたします。目に見えて力強さを帯びたストロークと色彩 が画面上に刻み込まれ、これまでの調和感が強かった印象から、まるでその静寂を破るような画面が現れます。これまで「委ねる」という意識の下で自然に寄り 添ってきた感覚から、積極的な行為としての「描く」ことへの渇望が強まったこと、それが彼の作品に変化をもたらしているように思います。画面上には主観対 客観の単なる二項対立に留まらない、一種の不均衡さが作品全体に漂っています。そんな複雑に入り組んだ両者の関係性が、画面上の情景に無数のバリエーショ ンを生み出し、それらの中から彼は自らの手に委ねながら選び、掴み取っていく作業を積み重ねています。 感 情という私的な概念はあくまでも画面の一部分に留まり、明確な行為としての筆致と色彩が、視覚的にも概念的にも画面上に明快なコントラストを生み出してい ます。それは絵画という概念の中に、客観性を備えた彼の主観の現れと考えることができます。他力に依存する感情よりも自意識を強めた「描く」行為を通じ て、絵画への客観的なまなざしを向けること。当展において伊吹は、これまでの作家活動の中で見い出したあらゆる要素を全て画面上に撒き散らし、自らの絵画 を構成する物事や概念、価値観、それらの境界線などの、まさに「ただなか」に我が身を置くことになるでしょう。 弊廊のオープニング展は、あえて絵画そのものの概念や本質についてじっくりと考える機会になればと思います。ぜひご高覧賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。
[作家プロフィール] 伊吹拓 1977 京都府生まれ(現在大阪府在住) 2001 大阪教育大学教養学科芸術専攻美術コース 卒業 2003 京都市立芸術大学大学院 美術研究科絵画専攻油画 修了
[主な個展] 2001 「untitledlandscape」名古屋港ガーデン埠頭20号倉庫(愛知) 2003 「field」GALLERY wks.(大阪) 2004 「事後ではなく」ぎゃらり かのこ (大阪) 「余所をみる」石田大成社ホール(京都) イタリア料理 Da・Maeda (京都、'06,'08,'11) 2005 「fan」neutron (京都) 2007 「curve」不二画廊 (大阪) 2008 「on paper works」gallery Den (大阪) 「tune」neutron (京都) 2009 「LIFE / WORK」DELLA-PACE (兵庫) 正福寺 (兵庫、'10) 「導音」neutron tokyo (東京) 2010 「霞 - KASUMI -」SEWING GALLERY (大阪) 2011 「あるままにひかる」neutron (京都) 「絵の声、色の夢」neutron tokyo (東京) 「絵の声、色の夢」Gallery Den mym (京都) 「絵の声、色の夢」DELLA-PACE (兵庫) 2012 「燻り」GALLERY 301 (兵庫) 「YOU」STREET GALLERY (兵庫)
[主なグループ展] 2000 「美しい日々」art box enfer(京都) 2002 「vector12」海岸通ギャラリーCASO(大阪) 2004 「藝術家の黒」石田大成社ホール(京都) 2006 「『美術』 ~描く~」GALLERY wks.(大阪) 2007 「それぞれの想い…」ギャラリーhorizont(京都、'08,'09) 2009 「KOMAZAWA MUSEUM×ART」 駒沢公園ハウジングギャラリー(東京) 2011 「来るべき世界」neutron tokyo(東京) 「木津川アート2011」奥鉄工所(京都) 2012 「木津川アート2012」森八幡宮拝殿(京都) [主な受賞] 2001 京展2001・須田賞('02,'08,'09,'11,'12入選) 2006 上野の森美術館大賞展・入選(\'07) 2007 とよた美術展 07・入選 2008 ビエンナーレうしく2008・入選 京都美術ビエンナーレ2008・入選 2009 創造都市はままつ絵画公募展・優秀賞
the three konohana 開廊パーティー/伊吹拓展 オープニングパーティー: 3月15日(金)17時~22時
全文提供:the three konohana
会期:2013.3.15~2013.5.5 時間:12:00~19:00 closed on Mon.~Wed、3.21 会場:the three konohana
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Last Updated on March 15 2013 |