小谷元彦:Hollow |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2010年 1月 20日 |
小谷元彦は1972年京都に生まれ、東京藝術大学美術学部彫刻科、同大学院美術研究科を修了し、現在は同大学で教鞭を取りながら東京を拠点に活動しています。1997年の初個展以来、国内外で精力的に作品を発表し、2003年には、ヴェネチア・ビエンナーレの日本代表作家にも選出されました。 小谷は、写真、映像、インスタレーションなど、多岐にわたる手法や素材を使って、人間の「痛覚」や、「変容」の瞬間を捉えるような数々の作品を発表し、身体を渦巻くダイナミズムを表現することに挑んでいます。今回、フォーラムで発表する新作では、人体像を媒介として、身体を取り巻く空気とその運動の可視化を試みます。空中では視覚として認識できない重力や浮力といった物理的な動き、あるいは身体の内から発せられる気やオーラのような精神的な現象など、我々の身体の内外には様々な動きが潜んでいます。例えば重力のベクトルが歪み、中空に放り出された場合、あるいは恍惚といった心身のエクスタシーに身を委ねた場合、その身体の描く形は通常の重力から開放され、次元を超えた異形へと導かれます。小谷が「Hollow」で造形するのは、その次元を超えた人体の残像です。分裂、反転、落下、浮上という動きは、彫刻として各パーツに解体され再構築されることで、人体のある瞬間の抜け殻のように漂います。 白い彫刻が発するうつろな空気は「Hollow」というタイトルそのものであり、その中へ足を踏み入れる者の重力のベクトルをも狂わせるかのようです。その空間に充満するエロスや痛みを通じて、我々は新たな身体感覚の覚醒や延長を体験するのです。 ※全文提供: エルメス財団 |
最終更新 2009年 12月 17日 |
とにかく軽い。実際の重さは知らない。視覚的に、ということだ。理由はすべからく白いこと、その一点に尽きる。ふわりふわりと宙に浮かぶもの、地上に居ながら天空を志向するもの。FRPによって作られた数々の《HOLLOW》(2009年)は、さながら「彫刻」の亡霊である。