福岡さゆり:時のかさなり 陶の断片 |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2011年 9月 12日 |
福岡さゆりの作品は流木のような乾いた木肌を模した陶のオブジェです。手びねりで造形し、1230度で焼成されています。かたちは切り株や木の皮の断片のようで、それぞれ40cm四方の大きさです。今展が東京初個展となり、新作も含めた6点を展示する予定です。 福岡さゆりは京都造形大学で陶芸を学びました。京都の大文字山へよく散歩に行っていたところ、ある日雨上がりに樹木や地面の土から、強烈な匂いが立ち上るのを体験します。それはまるで生命が現出したような生々しさで迫ってきました。もとより自然が好きでモチーフにも選んでいましたが、それ以来生命の誕生をテーマに「ハナレテウマレテ」と題した、球体が連なり泡状に増殖していくかたちを制作します。 なぜ自然を模するのか、なぜ土で制作をするのか、なぜ作品を発表するのかと自己を見つめるうちに、自らの内にある創作への強い意思を核のように感じたと言います。化石にノジュールと呼ばれるものがあります。化石標本にはなりにくい生物の化石を含む岩石塊で、小さなかたちの中にも当時の植生を想像させる情報が大量に含まれているそうです。福岡さゆりは、自らの創造の核をそこにもじったタイトルをつけた「小さなノジュール」というシリーズをつくりました。 グルグルと渦巻いて有機的に立ち上がるかたちは、太古の樹木の切り株のようです。雨に浸食されてじっとりと黒く腐っている部分、太陽に漂白されて化石のように白く固く乾いている部分、幹の色素を残したような黄緑色の部分、内側が朽ち落ちて空洞となり、カラカラと音がするように乾き、今にも折れそうな肌の表情。根元のような太い幹を残した断片のかたちからは、かつて枝を張っていた大きな樹木の力強さが伝わってくるようです。誕生し、朽ちて土に戻り、また転生される生命の永続を連想させるかたち。 どうぞ会場でご覧ください。 福岡さゆり 個展 グループ展 全文提供: INAXガレリアセラミカ 会期: 2011年9月6日(火)~2011年10月1日(土) |
最終更新 2011年 9月 06日 |