松元久子:ジンク -神供- |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2012年 7月 02日 |
FUMA Contemporary Tokyo | Bunkyo Art は松元久子展「ジンク -神供-」 を開催します。松元久子の陶の作品は、「鰐」をモチーフとしています。 鰐の動物としての強さ、表皮の質感、スタイリッシュな迫力にインスパイア されたことから始まり、次第に身近なファッションとしての鰐皮と結びつき ました。作家はファッションやブランドに対する憧れや違和感をテーマに、 値段をタイトルにした鰐皮のハンドバッグや、鎖かたびらを思わせる緑の 鱗で硬く覆われたコート、人肌にクロコダイル柄をプリントしたドレスなどを 制作してきました。実際に人が着ることができそうなこれらの洋服たちの共 通点は、いつも中の人間は不在だということです。長年松元の作品におい て、その消えてしまったであろう人型の空間は、なにより現代人を示してい ましたが、もろくも崩れ去る現実を経験し、その内側におとしこむ対象は、 人からより大きな存在である信仰対象へと変化し、次第にその対象を保存 しておくための「器」としての服の存在に注目するようになりました。作品タイトルでもあるジンクとは、「神供」という神への供物という意味です。このた びの展覧会では、狩人が獲物をカミに捧げるように、住人が祭事を行うよ うに、作家はクロコダイルをカミへの供物とし、展覧会を構成します。自然 から得られる惠みや畏敬の念から古来より信仰の対象となってきた山を イメージの源泉とし、自然の無限の力強さや、そして雄大さの内側に潜む ものへの供物を、複数の器という形で提示します。楽釉をかけ、顔料をし みこませた独自の手法でつくられた岩のようなテクスチャーは、何度も塗 装を重ねられることにより重厚感を増し、クロコダイルの革と見間違うような クオリティーとともに、感覚を揺さぶる迫力のある表情をもちます。一つ一 つのマチエールまでしっかりと作りこまれたやわらかな布の表情、硬質な 質感、たっぷりとした本体のボリュームは、見るものに厳しく揺るがない存 在を感じさせます。 全文提供:FUMA Contemporary Tokyo/BUNKYO ART 会期:2012年6月29日(金)~2012年7月14日(土) |
最終更新 2012年 6月 29日 |