展覧会
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執筆: 記事中参照
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公開日: 2010年 4月 23日 |
この展覧会では、前作『男の乗り方』を展開する形で制作した新作を発表いたします。
ステートメント 生きた金魚を掌(てのひら)に乗せてみた。ぬるりとしたものが、ぴちゃぴちゃ跳ねた。くすぐったさをこらえながら、こぼれ落ちないように手をすぼめると、握り潰してしまいそうな危うさに指先が震えた。小さな畏れと快楽の混ざり合ったあの感触——。
前作『男の乗り方』は、エロはどこから来るのかを探る試みでもあった。それは「距離に宿る」というのが、僕の得たひとつの答えだった。埋められない距離を埋めようとする欲望こそがエロを生み出す。では、その距離を埋めたいという欲望を発生させるポイント、いわば「エロスの着火点」はどこなのか。最近はそこに興味を向けている。もちろん一人ひとり違うはずだから僕自身にとっての着火点なのだが、しっかり掴もうとすると消えてしまう、くすぐったくて意地悪なもののように感じている。それは遠い昔の金魚の感触を思い起こさせる。
今回の展示は今年に入ってから撮影したものを中心に構成する。いまだ撮影していないものも多く含まれるだろう。存在しないものについて多くを語るのは難しいが、この「金魚掬い」がうまくいくことを願っている。 2010 年4 月 鷹野隆大
鷹野 隆大(タカノ リュウダイ) プロフィール 写真家、1963 年福井市生まれ。1987 年早稲田大学 政治経済学部卒。2006 年第31 回木村伊兵衛写真賞受賞。セクシュアリティをテーマにした作品に加え、最近は都市にも興味を向けている。 主な個展: 2000 「ヨコたわるラフ」 ツァイト・フォト・サロン、東京 2006 「イン・マイ・ルーム」 ナディッフ、東京、「男の乗り方」 ツァイト・フォト・サロン、東京 2008 「ぱらぱら」 ツァイト・フォト・サロン、東京 2009 「おれと」 ナディッフ、東京、「花街びと」 ギャラリーエム、愛知、「公開製作46 記録と記憶とあと何か」府中市美術館、東京 2010 「イキガー」 ギャラリーラファイエット、沖縄、「それでも、ワールドカップ」 東塔堂、東京 グループ展歴多数。 パブリック・コレクション: 東京都写真美術館、国際交流基金、川崎市市民ミュージアム、上海美術館、太宰府天満宮 作品集: 『IN MY ROOM』 蒼穹舎 2005 年、『鷹野隆大 1993-1996』 蒼穹舎 2006 年、『ぱらぱら まりあ/としひさ』 Akio Nagasawa Publishing 2009 年、『ぱらぱら ソフトクリーム/歯磨き』 Akio Nagasawa Publishing 2009 年、『男の乗り方』 Akio Nagasawa Publishing 2009 年
全文提供: ユミコ チバ アソシエイツ
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最終更新 2010年 6月 18日 |