シュシ・スライマン:Sulaiman itu Melayu (Sulaiman was Malay)
展覧会
執筆: カロンズネット編集3
公開日: 2013年 10月 07日
テキスト:メラニー・ポコック
初めての個展開催にあたり、シュシ・スライマン はアイデンティティの概念を深く考察しています。「Sulaiman itu Melayu(スライマンはマレー人)」と題された本展では、彼女の亡き父親を中心に扱いながら、ドローイング、コラージュ、サイト・スペシフィックなインスタレーションを通じて、いかに東南アジアおよびマレー文化が構築され、受け止められてきたかを探求しています。文化的枠組みが形成されるプロセスをなぞりまた解体することで、本展の作品は、アイデンティティの先天性に対してだけではなく、彼女の個人的歴史に対する自身の仮定に対しても挑戦しています。スライマンは彼女特有の結果を設定しない自由なアプローチで、人生の複雑さをアートのそれと結びついたものとして提示します。 今回の展覧会のために、シュシは父親の墓から取った土、彼女のドローイングと以前使用していたスタジオでありインスタレーション作品でもある、《Rumah》(2002-8)を燃やした灰を混ぜ合わせて作品を制作しました。この作品で、シュシは《Rumah》(後に2011年のシンガポールビエンナーレにて作品《Rumah Sulaiman di Belakang Kedai》の一部として発表された)の「ポスト・プロダクション(制作後)」の行為から、同じ素材における主題と物質的側面の価値をオーバーラップさせながらも、ある種の「ポスト・プロセス(過程後)」の行為へと変化させています。 小山登美夫ギャラリーシンガポールのため特別に制作した《Sulaiman bought a home(スライマンは家を買った)》は、彼女の父親が家族のために初めて買った家のレプリカです。人が亡くなったときに暗唱されるコーランの一節、「Surah Al-Fatihah」がジャワ語で刻まれたこの作品は、安らぎに満ちたイスラム教徒マレー人家庭を浮かび上がらせます。《Sulaiman was a rubber tapper(スライマンはラバー・タッパー*だった)》は、彼女の実家(マレーシア・ジョホール州、セガマ)に残っているゴムの木の樹液から作ったシートで制作。これらの作品を通して、シュシは人間と自然の関係を探求し、彼女自身の父親からの「独立の儀式」に取り組んでいます。 * Rubber Tapper(ラバー・タッパー)...木に穴をあけ、ゴムの樹液を集める人。 その他、日本占領時(1941-45)のマレーシア紙幣を用いた作品、昔のマレー人のイメージを重ねた封筒のコラージュ作品などが出展されます。アーティストに手を加えられることによって、これらの作品は物自体が内包するエネルギー、そして文化的認識がつくられる際の問題などを浮き彫りにします。 また、小山登美夫ギャラリーシンガポールでの展示の一部として、シュシはマラッカのゲストハウス、「12レジデンス」をオープンします。そこでゲストは予測できないようなアートを経験することができるでしょう。
[作家プロフィール] シュシ・スライマンは1973年、マレーシア・ムアール生まれ。経験、感情や記憶に基づいて制作される作品は、題材と鑑賞者の間に緊密な相互作用を生み出します。1996年マラ技術大学において美術学士号を取得した後、マレーシア国立美術館の権威ある賞-Young Contemporaries Awardを受賞。マレーシア国内に留まらず、国際的な展覧会や研修プログラムにも参加しています。 主なグループ展に「Open House」シンガポールビエンナーレ(2011)、 アジア太平洋現代美術トリエンナーレ(2009-10)、ドクメンタ12(2007)、 Continuities: Contemporary Art of Malaysia At The Turn of The 21st Century(広東美術館、2004)や フィレンツェビエンナーレ(2003)などがあります。マレーシア、クアラルンプールに在住し、展覧会やプロジェクト用スペース「12」を運営しています。