作品紹介 デニス・ホリングスワースの作品の画面は、まるで演劇のステージのようです。そこにとどめられている制作のプロセスひとつひとつの要素とその躍動感——重ね塗られたレイヤー、作家の手の動き、筆触、厚く塗られた絵の具とそれを削った跡、栗のようにとげのある絵の具のかたまり、そしてそれらの影、独特の色調など——、これらはエネルギーを放ち、鑑賞者の目を力強くとらえます。筆だけでなくパレットナイフやスキージ、また厚紙で自作した道具等も用いて生まれる、尽きることのないテクスチュア、楽しく甘美な画面は、ホリングスワース自身の好奇心、制作の喜びを物語っているようです。しかし乾いていない画面に絵筆を入れる、"wet on wet" と彼が呼ぶ手法は、絵の具が乾くまでの時間との闘いでもあり、ストイックな側面もあるのです。計画/偶然、意図/直感。これら全て混じり合って作品が生まれます。
ホリングスワースが美術大学を卒業した80年代末から90年代頭は、ポストモダニズムが台頭し、理論が前に出たアートが主流でした。「ボディ」というものをアートに取り戻したいと考えた彼は、絵の具というメディウムのもつ可能性への探求を始めます。またホリングスワースは抽象のペインターと捉えられていますが、彼自身にとって抽象と具象は「ある形をイメージとして見る」という同じことの2つの面であると言います。むしろその間にある部分の可能性、また常に一方が他方へと変化しうるということ、それによる想像力の広がりの方が重要なのです。完成図を知らずに最初の一筆を始め、絵の中に分け入っていくこと。そこで得られる発見が、彼の制作の核となっています。
展覧会について ホリングスワースは自身の制作を、直線的ではなく、W.B. イェイツの詩にある「広がりゆく螺旋(widening gyre)」のようにとらえています。つまりひとつの手法、スタイルが別のものに取って代わるのではなく、それらが増えながら発展していくということです。ペインティングの言語のボキャブラリーを増やし続けたい。そう彼は話します。本展では、上述の "wet on wet" に加え、ストライプとテキストの作品が展示されます。ストライプは以前から使用されていた、絵の具を削りとる手法からの発展。テキストはステンシルを使用するものとしないものの両方があり、作家のウェブ上のブログから引用されています。本展は、小山登美夫ギャラリー京都と同ビル1階のTKGエディションズ京都も使用し、約12点を展示します。是非ご高覧下さい。
作家プロフィール デニス・ホリングスワースは1956年スペイン、マドリッド生まれ。1985年、カリフォルニア州立工芸大学卒業。1991年、クレアモント大学院修了。現在、バルセロナ近郊のトサ・デ・マルと、ロサンゼルスにて制作活動を行っています。
ドイツ、オランダ、フランス、スペイン、ニューヨーク、ロサンゼルスなど、世界各地で展覧会を多数開催しています。小山登美夫ギャラリーでは、1997年、 1999年、2002年、2004年、2007年の展覧会以来、4年ぶり6回目の個展となります。
全文提供: 小山登美夫ギャラリー
会期: 2011年10月1日(土)-2011年11月5日(土) 会場: 小山登美夫ギャラリー 京都 オープニングレセプション: 2011年10月1日(土)18:00 - 20:00 アーティスト・トーク: 2011年10月1日(土)17:00 -
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