放課後のはらっぱ:櫃田伸也とその教え子たち |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2009年 9月 10日 |
櫃田伸也(ひつだのぶや 1941年東京生まれ)は、優れた画家であると同時に優れた教育者でした。櫃田は愛知県立芸術大学で1975年から2001年まで教鞭をとりましたが、彼のもとへ自然と引き寄せられ、やがて現代アートのトップランナーとして羽ばたいた作家は少なくありません。奈良美智、杉戸洋なども、櫃田の教え子です。そして、彼らをはじめ多くのアーティストが、櫃田と共に過した時間を今でも貴重な体験として捉えています。この展覧会は、そのような櫃田と彼の教え子たちが織り成す創作の平野(はらっぱ)を、教え子たちの視点から紹介するものです。 そのため展覧会の見どころは、櫃田の作品と日本を代表するアーティストの作品を、これまでにない新しい側面から楽しめる点にあります。櫃田の作品と並行するかたちで、彼らが櫃田のもとで学んだ初期作品、新作、代表作を織り交ぜて展示します。それにより、櫃田作品の魅力に改めて気づくと同時に、多くの作家が櫃田のもとからどのように展開していったのかも明らかとなるでしょう。そして、展覧会全体をめぐることで、櫃田と多くのアーティストが出会い交差したその瞬間の密度をも感じ取れるにちがいありません。 出品作家 会場会期 全文提供: 愛知県美術館 |
最終更新 2009年 8月 25日 |
詳細は後日のレビューに記したいが、近年稀にみるほどよく作り込まれたこの展覧会についてまず一言だけ紹介しておきたい。 展覧会は愛知県立芸術大学で1975年から2001年まで教鞭をとった櫃田伸也と、その教え子19名による作品を展示するものだ。言うまでもなく櫃田と教え子の関係は、徒弟制からなる一流派のそれではない。しかし美術史的な見地からすればまさしく一つの「スクール」を軸にある流れを詳らかにしようとする態度にほかならず、私はそのような歴史的な視点が物故作家ではなく現存作家に照射され、かつ成功をおさめていることに敬意をあらわさずにはいられない。 こう書くと非常に硬派な展覧会のように思われるかもしれないが、ポスターなどの印刷物に端的にあらわれているように会場は何より作品を楽しむことができるよう構成されている。櫃田の作品と奈良美智、杉戸洋、加藤美佳ら教え子の作品は時に隣り合うよう展示されており、それぞれの作品がゆるやかに繋がり共鳴する様は幸福感に満ちている。 一言のつもりが長くなってしまった。きわめて重要な展覧会であることが伝わるだろうか?