魚住剛:F |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2010年 12月 13日 |
創造性の再考やリアリティの拡張を試みる気鋭の若手アーティスト、魚住 剛 (Goh Uozumi) による初の個展。 「 F 」 は、コンピューティングによってはじめて可能になる造形システムを用いて、かつてない表現領域へ挑戦するプロジェクトを、新作を含め紹介するものです。 展覧会は、観客がミクロな光を覗くことになる《F - void sample》(2009)の最新ヴァージョンと、マクロな光を浴びる《F - life》(新作) という対称的な2作品で構成されます。会場に入るとまず、光の入出力をもつ眼球のようなモジュールが数十個,光でネットワークを形成するインスタレーション《F - life》 が設置されています。そして会場奥の別室では、暗闇の中、顕微鏡で覗くと、わずか爪ほどの大きさのLCDに可視化されたコンピュータ・プログラムを、極小の光の束として見ることができる《F - void sample》が展示されています。 これらの作品はいずれも、構造的に「オートマトン」(プログラムによってボトムアップかつ自律的に稼働するシステム)を採用することで、つねに新たなパターンを生成しています.また,人間の「意識している世界」を生成するメカニズムに潜む,非連続性(目の盲点の様に,見えていない事が見えていない,といった普段気づかれない知覚の断絶.魚住はそれを,「void」と呼んでいます)に着目した制作姿勢は,作品に独特な世界観をもたらしています。 オートマトンに見られるボトムアップな方向性と,実世界から見渡すトップダウンな方向性,その両方のバランスに注目することで,造形思考が,これまでにない中間的な宇宙を生成することが,ここではめざされています。 「F」 における「造形」とは,「人間にとっての知覚世界」を前提として行なわれる表現の高解像度化や多様化といったものとは,本質的に異なる価値や世界観を創出しうる,と魚住は述べています。彼は,連続的な手法や価値観と対比するために,この新しい造形的志向を「離散造形」と呼んでいます。離散造形とは,「原理的であるがゆえに,あらゆる形態の可能性を潜在させ,色彩と律動を生む豊かさをもち,知覚に対して極限に薄く,イメージを超えた光」(魚住剛)としてあります。ここでは光が,感受を満たす物質性とは異なるネットワーク的関係性をもちうることで,新たな時間や空間の体験へと私たちを誘うことになるでしょう。 「人類史上で長く続いた認知レベルのものから,情報化時代に台頭した知覚レベルを扱うものへ。そして,より潜在的で不確定な領域へ.表現は,第3フェーズへと移行する。」 この展覧会で,ぜひ魚住の探求する新たな知覚の領域を,多くの方々にご体験いただければと存じます。 Goh Uozumi / 魚住 剛 キュレーター: 四方幸子(メディアアート・キュレーター) ※全文提供: ASK? art space kimura 会期: 2010年12月13日(月)-2010年12月28日(火) |
最終更新 2010年 12月 13日 |