展覧会
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執筆: 記事中参照
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公開日: 2011年 9月 02日 |
田中栄子は、1995年に京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻版画修了。1998年に、大阪府の芸術家交流事業「ART-EX」プログラムにより、ベルギー・カスタレー市のフランス・マセレール・センターにて制作。2009年に京都市立芸術大学大学院美術研究科博士(後期)課程版画領域・博士号を取得。現在、大阪府に在住しています。
2002年の東京オペラシティアートギャラリー「Project N」での個展をはじめ、今日まで精力的に発表を続けて来ました。また、2000年には第8回浜松市美術館版画大賞展にて大賞を受賞し、2002年にはキリンアートアワードにて奨励賞を受賞するなど、制作のベースとしている絵画、版画共に高く評価されています。そして、その作品はパブリックコレクションとして、大阪府立現代美術センター、町田市立国際版画美術館、アントワープ王立美術館等に収蔵されています。
Gallery Jinでの2回目の個展となる本展では、絵画作品6点、リトグラフや切り絵作品11点を展示いたします。
作家のコメント 最近は「empty」というテーマで作品を制作しています。「empty」とは「空っぽ」「空虚」のほかに「不在感」という意味もふくまれます。
私はなんでもない「場所」や「場面」を描くことがほとんどです。描く場所は無機質なボーリング場や駐車場、高速道路や孤立した建築物などの要素などが多いですが、今回は空港のロビーや淀川の河川敷、深夜のテレビ番組の画像などを描いています。それらのイメージから今回のテーマである、このモヤモヤした「不在感」をなんとか作品にとどめることができればと思っています。
作品制作の際に新聞や雑誌の切り抜きやスナップ写真をもとにイメージを無意識化する過程として切り絵を制作します。それらをもとにペインティングやリトグラフ作品を制作します。それは写真の中にある物語性や意味性をはぎとっていって、私がそのイメージを選択し、そのイメージを描くきっかけを感じた違和感に自分自身が触れればと思っています。そしてその違和感を少しでも多くの人と共有できればと思っています。
2009年3月に博士論文を提出し、博士号を取得いたしました。テーマは「アナザーワールド・境界面としての作品と研究」です。論文中ではその違和感を「アナザーワールドの入口」や「ノイズ」「風景のゆるみ」と表現しています。
人間が作り出す恐怖心や不安感がアナザーワールドを生み出すのではないかという側面に注目し、その立ち現れをアナザーワールドの入り口、扉、境界面として捉え直し論じています。それは、こちら側であると同時に向こう側でもあり、両義性を帯びた領域なのです。ある種の力が発生する境界面としてのアナザーワールドという認識は、写真を起点としつつも、切り絵、アクリル絵画、リトグラフという3つのメディアを、常に緊張感を維持し、作品を並置することで、境界面としてのアナザーワールドを確保できればと思っています。
また、私は周囲の事物を色面としてみなす感覚の延長上に、二次元平面上での表現の可能性を見ています。作品それぞれの土台や骨格になっているのが「フラットな色面」による「風景のゆるみ(確固として信じて疑わない風景がゆるむ時)」を検証していく事で、それらの技法の移動によって制作される、それぞれの作品を作品のままに並置して発表をしていくことで、私の求める「アナザーワールド」を探ることができるのではないかと考えています。
3月の震災。 直後はどうしようもない無力感に襲われましたが、最近では生きていること、また生かされている事、作品を制作できる環境にいることを感謝するだけの毎日です。作品を制作することで自分自身が癒され、作品によって希望をもつことができ、新しい可能性を感じます。
全文提供: Gallery Jin Projects
会期: 2011年9月3日(土)-2011年9月24日(土) 会場: Gallery Jin Esprit +(Gallery Jin Projects) オープニングレセプション: 2011年9月3日(土)17:00~19:00
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最終更新 2011年 9月 03日 |