北島敬三:1975-1991 |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2009年 10月 02日 |
北島敬三は、ワークショップ写真学校(森山大道教室) を経て、冷戦時代にあたる1980年代を中心に、東京、沖縄、ニューヨーク、そして東欧、ソ連の各都市を廻り、分断された世界に生きる人々を体当たりで写真に収めました。 中でも、1981年に滞在したニューヨークでは、若者の集う最新流行のクラブや、貧困層の集まる危険な路地に出て、ストリートスナップの手法を遺憾なく発揮、刺激的なニューヨークの日常を浮き彫りにしました。これらのスナップをもとに翌年発行された写真集『NEW YORK』で第8回木村伊兵衛賞を受賞。また、1991年には崩壊直前のソ連を撮影し、16年の時を経て2007年に写真展「U.S.S.R.1991」として、初めてまとまった形で公開し、第32回伊奈信男賞を受賞しました。 本展では北島敬三の出発点ともいえる、前半期の仕事に焦点をあて、1975-1991年に撮影された《コザ(沖縄)》、《NY》、《U.S.S.R.》の3つのシリーズを軸に、《東京》、《東欧》シリーズを加えた163 点で構成します。冷戦時代、西と東の世界に生きる人々の姿を通して、テレビやインターネットにはない記憶のメディアとしての写真の力を今一度、考えてみようとするものです。(作品総数:163点) 北島敬三 略歴 全文提供: 東京都写真美術館 |
最終更新 2009年 8月 29日 |
同一人物を一定の期間を置き繰り返し撮影する≪Portraits≫シリーズの印象が強い人にとっては、今回の北島敬三の個展は意外にうつるかもしれない。確かに≪Portraits≫シリーズで定められているルール(背景が白であること、衣服が襟付きの白シャツであること、胸像であること)がもたらす整然とした印象と、本展に並べられている1975年から1991年の時に猥雑で直情的なスナップショットのそれはあまりに異なる。 しかし、どちらの写真も被写体の有名無名を問わず「ポートレイト」であることから、北島が一貫して肖像に関心を抱いてきたことがわかるだろう。≪Portraits≫のシリーズはそれまでのどちらかと言えば瞬間的な肖像に、時間の蓄積を取り込んだものだ。≪Portraits≫が本展の対象にしている上限の1991年の翌年、1992年から開始されたということは甚だ興味深い。