展覧会
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執筆: 記事中参照
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公開日: 2010年 1月 08日 |
深山に三日月の絵柄が古色ゆかしい水墨調染付の壺がくるりと廻ると、小猿を抱いた親猿の陶彫が現れる。ポップでカラフルに味付けされた猿の愛くるしい姿、壺だと思ったかたちの意外性に驚きと感嘆の声が上がる瞬間です。 セラミカ2009 年1月は、見る者を驚きと微笑みの世界に導く、愉快な作品の登場です。 桝本佳子は2006 年京都市立芸術大学大学院を修了、2008 年第1回ミッドタウンアワードアートコンペで準グランプリを受賞し、現在国立近代美術館工芸館「装飾の力」展にも出品中の作家です。今展では新作を含めた8点を展示予定です。 火だすきが荒々しい狐色の壺の上に、日本の城がリアルにつくられている「壷/城」、素朴な茶緑の壷ふたつを繋ぐようにして、現代的な吊橋が掛けられた「橋/壷」、印花紋の壷にマリンブルーの美しい漁港風景が繰り広げられる「壷/漁港」、赤銅色の壷と五重塔が合体している「五重塔/壷」など、誰もが知っている日本陶芸の焼成や釉薬などの要素をベースに、独特の現代的発想を組み合わせてつくり出す作品は、ダイナミックでユーモアがあり、また凝視したくなるような細密な美しさを備えています。 桝本は幼少より茶道に親しみ、子供心に壷や香合を愛玩する大人たちの態度に興味を抱き、「用途はないが、ため息をつくように眺め入る、アートよりも親しみのある身近な存在としてのやきもの」を考えて作品をつくっています。日本陶芸の各種技法を勉強しながらつくるマチエールやディティール、取り合わせ、組み合わせの妙味には、若い作家の等身大のセンスやユーモアが溢れ、その魅力は見る者を捕らえて離しません。ぜひ会場にてご覧下さい。 桝本佳子プロフィール 1982 生まれ 2007 京都市立芸術大学大学院修士課程陶磁器専攻修了 受賞: 2005 京都市立芸術大学制作展同窓会賞 2006 国民文化祭やまぐち陶芸展文部科学大臣賞 2007 京都市立芸術大学大学院修了制作展大学院市長賞 2008 東京ミッドタウンアワードアートコンペ準グランプリ(グランプリ該当無) 2009 京展立体部門館長奨励賞、トーキョーワンダーウォール立体・インスタレーション部門大賞 展覧会: 2004 グループ展「陶7人展」(クラフトギャラリー集/京都) 個展「くらしのなかのやきもの」(京都芸大ギャラリー) 2005 京都市立芸術大学卒業制作展(京都市美術館) ※全文提供: INAXガレリアセラミカ
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最終更新 2010年 1月 08日 |